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2016年12月 5日 (月)

週刊新潮編集部への公開質問状

PDF(督促状+公開質問状)

 
公開質問状3月22日

『「甲状腺がん」増加を喧伝した「報道ステーション」の罪』
      
における専門家発言について

 
株式会社 新潮社 週刊新潮編集部 御中

2016322

放射線被ばくを学習する会

 さくら花咲く候、貴社ますますご清栄のことお悦びもうしあげます。

 貴誌週刊新潮324日号の無署名記事=「甲状腺がん」増加を喧伝した「報道ステーション」の罪を拝読いたしました。 

マスメディアが他のマスメディアを批判する、それは、私ども一般視聴者・読者にとっては大変喜ばしいことです。物事に秘められた論点を明るみにし、それを掴む絶好のチャンスを与えてくれます。しかしながら、論争は事実に基づいて行われることが最低のルールです。虚偽を用いては、ただの誹謗中傷、罵倒合戦におわってしまいます。

そこで、質問させて頂きます。

記事の中では「ではその偏向の度合いを専門家に解説してもらおう」といって、高名な先生方が登場し、その権威で「事実」を語っていらっしゃいますが、私ども「放射線被ばくを学習する会」が、福島の甲状腺がん検査を丹念に追いかけた基礎情報からすると、とても奇異な発言が散りばめられています。およそ専門家らしくない言説です。

まずは批判よりも確認です。紙面上の発言に関する質問を以下に記しました。

 「いたずらに不安を煽るばかりの“ニュース”を喧伝した、その罪を問う」とまでいって文責を担う貴誌編集部の責任ある回答を求めます。




◆1 中川恵一東大医学部准教授は記事の中で、

  "飯舘村などの子どもたち1080人の被ばく量が最大35ミリシーベルト程度だった" 旨おっしゃっています。

<質問1>これは汚染された衣服をバックグラウンドとしており、甲状腺内部被ばく量は1/5程度に過小評価されています。弘前大の床次教授も線量評価には大きな不確かさがある、と証言しています。中川先生は、これらについてどのようにお考えなのでしょうか?


◆2 中川恵一東大医学部准教授は
"チェルノブイリでは就学前の子どもの5%近くが(甲状腺に)5,000ミリシーベルト以上被曝し、いうまでもなく福島の被ばく量は遥かに少ない" 旨おっしゃっています。

Tronkograph_4  <質問2> 5,000ミリシーベルト以上とはチェルノブイリ事故直後に避難した子どもたちのデータです。 チェルノブイリ国の就学前の子のわずか0.005%です。平均被ばく量は、福島県の子どもたちの平均被ばく量と格段の差は無く、トロンコ博士は、チェルノブイリでも甲状腺がんを発症した子どもの51%100ミリシーベルト未満だったと、報告しています。

 中川先生には紙面上の発言を訂正なさるおつもりはありませんか?


◆3 松本義久東工大准教授は
      
"日本人は海藻を良く食べるから放射性ヨウ素を取り込む余地が少ない"旨おっしゃっています。


 <質問3>海藻を日常食べてるときの安定ヨウ素血中濃度とヨウ素剤服用時の安定ヨウ素血中濃度とでは数桁の違いがあります。断言は危険です。ヨウ素剤の場合は服用後約160000μg/L前後にまで達しますが、日本人の尿中ヨウ素は中央値で 300600μg/L程度です。松本先生が"余地が少ない"と断言なさる根拠を教えてください。


◆4 三橋紀夫ひたちなか総合病院センター長は
      "
(チェルノブイリ三国と) 国境を接していたポーランドでは海藻を摂取していたので甲状腺がんが発症しなかった" 旨おっしゃっています。

 <質問4> ポーランド大使館に照会したところ、海藻摂取の食生活は無く、チェルノブイリ事故のとき甲状腺がんが予防できたのは、安定ヨウ素剤の服用を徹底したからだ、との回答をいただきました。三橋先生はこの誌上発言を撤回し、訂正なさるおつもりはありますか?


◆5 澤田哲生東工大助教は

      "100ミリシーベルト以上被ばくしない限り、甲状腺がんのリスクはありません" "チェルノブイリの方が放射線や甲状腺がんにまつわるデータの積み重ねがある" 旨おっしゃっています。

 <質問5> チェルノブイリにおけるデータの積重ねは尊重しなくてはなりません。トロンコ博士のデータによれば、チェルノブイリで甲状腺がんを発症した子どものうち51%は、甲状腺被ばく量が100ミリシーベルト未満でした。(◆2にグラフ既出) 澤田先生は、チェルノブイリのデータを尊重して、誌上発言を訂正なさいますか? 311報道ステーションでの、ベラルーシのユーリ・デミチク所長の発言「甲状腺がんにこれ以下なら大丈夫という値はありません」に対してはどうお考えでしょうか。


◆6 三橋紀夫ひたちなか総合病院センター長は潜在がんは死ぬまで見つかることがない、そのくらい甲状腺がんの進行は遅い
"旨おっしゃっています。

 <質問6>これは高齢者の甲状腺がんについていえることですね。年少者の甲状腺がんは進行が早いということは医学の常識だと、何回も教えられています。日本癌治療学会がまとめた『甲状腺腫瘍ガイドライン』Clinical Question 2 には 「(小児の乳頭がんの)臨床的な特徴は成人のそれとかなりの差異を示す。頸部リンパ節転移が激しく,腫瘍の局所浸潤が多く,治療後の再発も多い」と記されています。」http://www.jsco-cpg.jp/guideline/20.html#cq2
  三橋先生の発言とガイドラインの記述との間には大きな矛盾があるようです。いかがお考えでしょうか?

      
◆7 中川恵一東大医学部准教授は
      "甲状腺がんの5年生存率はほぼ100%だ" 旨おっしゃっています。
      

<質問7>これは、遅れることなく適切な治療を施した場合のことですよね。治療をしなくても生命に異常がない、と危うく誤解するところでした。誤解を招く発言は、甲状腺がんの摘出を受けた患者さんたちを冒涜するものです。中川先生は、誤解を招かないように、発言の補足をなさいますか?

◆8 御誌記者は、

      "本来発見すべきではないがんをわざわざ見付けてしまった過剰診断だ" 旨おっしゃっています。

 <質問8>もしそうだとすれば、甲状腺摘出手術をうけた患者さんは、医療過誤の犠牲者ということになります。週刊新潮(新潮社)は、福島県立医科大学を傷害罪で告発しますか? 
 逆にもしそうでないなら、週刊新潮(新潮社)は甲状腺摘出手術をうけた患者さんを、虚偽をもって冒涜することになりますが、宜しいのですか?

      
  ◆9 中川恵一東大医学部准教授は

      "韓国では(検査によって)甲状腺がんが増えつづけた" 旨おっしゃっています。

Nennreibetuthyroidcancer
    <質問9>甲状腺がんの発症率(=罹患率)は年齢によって大きく変化するのです。 グラフは日本、国立がん研究センターのがん登録です。韓国のデータと言われるものは、あくまでも成人女性のデータです。福島の甲状腺検査は、事故時18歳以下の年少者のデータです。単純に比較することはできません。

中川先生は、調査対象の年齢・性別による発症率の違いについて、どのようにお考えですか?

 
10 中川恵一東大准教授は、

二巡目の検査で51名のがんが見つかったことを、"一度でがんを持つ全員が引っかかる事はないから"と、51人は一巡目における見逃しである旨おっしゃっています。

<質問10これは、本来一巡目で166名が見つかるべきところ51名を取りこぼし、115名しか見付けられなかったという意味でしょうか? そうだとしますと、相当な見逃しの率になります。見逃しの数51人は二巡目検査が進めばこれからもなお増えるでしょう。中川先生の東京大学病院で行われている検査も、このように見逃しが多いのですか?


11 御誌記者は、
      
"福島で見つかっている甲状腺がんは、原発事故が原因であるとか因果関係があるとはいえない、と専門家が言ってる" 旨まとめています。

<質問11 記事に登場する専門家は、みなさん原発事故直後に事故を小さく見せるために奮闘した方々ばかりで、専門家を総称するにはずいぶんと人選に偏りがあるのではありませんか?

l 中川恵一氏は放射線科の医師ですが、全国の電力会社の組織である電気事業連合会が、福島原発事故で休刊していたグラビア雑誌Enelog2011年秋に復刊するとき、巻頭言を自ら飾りました。そのくらい原発業界と価値観をともにする方です。

l 松本義久氏澤田哲生氏は、ともに東京工業大学で原子力推進研究に従事し、311事故後はテレビに出ずっぱりでした。<御用学者>と言う言葉が生まれるきっかけを担った方がたです。松本氏は、放射線ヨウ素内部被ばくの、実効線量と等価線量との混同を利用し、放射性ヨウ素で汚染されたキャベツを毎日100個以上食べても大丈夫だと豪語し、被ばくを2桁も小さく見せました。

l 三橋紀夫氏は、放射線腫瘍医だそうです。311事故前、原発推進のための宣伝活動で顰蹙(ひんしゅく)を買っていた「日本原子力文化財団」に、事故後論文を提供しています。放射線の影響を過小評価するばかりか、放射線を礼賛し放射線は発がんを抑えるとまで主張しています。;


12 中川恵一東大准教授は
       "妄想を言ったり福島を利用することでいかに現地の人々を傷つけているか考えてほしい。私の知る限り、福島県民の多くは被曝と甲状腺がんとの間に関連性はないと理解していますよ"旨総括なさっています。

 <質問12先生方が記事の中で、事実と違うことを語ることこそが妄想というものではありませんか。被曝と甲状腺がんとの関連性は、信じ込んで判断するものではありません。科学が明らかにしていくだけのことなのです。

「放射線の影響とは考えにくい」という検討委員会の見解に対し、郡山市の男女が「素直にそうとは受け取れないですね」、「じゃあ、何が原因なんだ。お医者さん調べてくださいよ」と意見を述べる姿が、報道ステーション311特集で放映されています。この一般市民の反応について、週刊新潮編集部・執筆記者の方はどうお考えになりますか?

質問は以上です。

年度末でご多忙とは存じますが、331日までにお答えくださるよう、お願い申し上げます

放射線被ばくを学習する会

週刊新潮さん、ご自分が言った約束は守ってください!

 

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