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2017年8月 5日 (土)

20mSv法制化への動き:7.23第38回被ばく学習会報告ーその1

 第38回被ばく学習会「土の除染より心の除染?」は7月23日、35名の参加で開催されました。

 「20mSv法制化への動き」についての報告(温品惇一)に続き、福島県伊達市の、被ばく問題への対応を黒川祥子さんから詳しくお話しいただき、たっぷり質疑応答しました。参加された研究者から、早野龍五・東大教授の論文に対する批判も展開されました。

 まず、「20mSv法制化への動き」についてご紹介します。

201707231_edited1https://www.nsr.go.jp/data/000192741.pdf

 動画はこちら

 資料PDFはこちら

20mSv法制化を要求する読売新聞社

 さる2月9日、読売新聞は、ICRP2007年勧告の取り入れに向けた放射線審議会権限強化法案の国会上程を機に、「放射線審議会 民社党政権時の基準を見直せ」と題する社説を掲載しました。

 「科学的には、100ミリ・シーベルト以下の被曝による健康への影響はないとされる」との誤った前提のもと、「1ミリ・シーベルトの呪縛」が福島復興をさまたげているとして、ICRP2007年勧告を取り入れ、現在の法制にはない「20mSv」を法制化するよう要求しています。

 また、食品の放射能基準、特に飲料水中のセシウム量の基準値は、米国が1キロ・グラム当たり1200ベクレル、欧州が1000ベクレルなのに対して、日本は10ベクレルだ」として日本の基準をゆるめるよう求めています。

 この飲料水基準の国際比較はまったくのフェイクです。

Photo

 1) WHO飲料水水質ガイドライン(第4版、日本語版) 216頁 
 2) 食品中の放射性物質の新たな基準値
 3) National Primary Drinking Water Regulations Radionuclides

 4) COUNCIL DIRECTIVE 2013/51/EURATOM ANNEX Ⅲ

 WHO(世界保健機関)、日本、EU、米国はいずれも1日の飲料水量を2リットルとして基準値を計算しています。

 WHO、日本、EUは飲料水中による内部被ばく線量を年間0.1mSvに抑えるため、セシウム137の基準を10~11Bq/Lとしています。

 米国はもっと厳しく、飲料水中のガンマ線・β線による内部被ばくを0.04mSv(4ミリレム)に抑えることを目標にしているので、セシウム137の基準を7.4Bq/Lとしています。米国の方が日本より厳しいのです。読売新聞社説の国際比較はまったくのフェイクです。

 このフェイク社説に対し、2月15日、18日、3月13日の三度にわたり、放射線被ばくを学習する会は327人の賛同を得て、読売新聞社へ公開質問状を提出しましたが、いまだに回答はありません。

またもやフェイク社説

 社説に書いている放射能基準値が間違っていると、公開質問状で指摘しているのに、6月26日の読売新聞はまたもや、「放射線審議会 確かな情報を分かりやすく」と題するフェイク社説を掲載、「1mSvの呪縛」「20ミリ取り入れ」などを放射線審議会に要求しています。

 これに対し7月12日、放射線被ばくを学習する会では574名の賛同人とともに、再度公開質問状を提出しました。

2007年勧告取り入れに動き出した放射線審議会

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 省庁からの諮問がなくても放射線審議会が独自に提言できるようにする「放射線審議会権限強化法」が4月7日に成立しました。

2007年勧告取り入れに発破をかけた田中委員長

 6月16日には権限強化後、初の放射線審議会が開かれました。冒頭、放射線審議会を管轄する原子力規制委員会の田中俊一委員長が、自ら「異例」と認める挨拶を行い、上の動画にあるように、ICRP2007年勧告取り入れに向けて、各委員に発破を掛けました。

 「福島の事故を受けた日本が、国際的に見ても極めて、ちょっと合理性を欠くような放射線防護基準を決めている。世界の規制機関の長の集まりなんかに行くと、ちょっとあきれられると言うか、そういうようなこと、たくさん聞いてきました。・・・放射線防護基準、わが国では非常に取り入れが遅れちゃってますけれども、ICRPの2007年勧告、もう少し古いような気もしますけれども、そういったICRPの基本原則とかそういった考え方も踏まえて、本当に国際的に見ても、わが国のイチエフの被害者である住民がきちんと回復に向かえるような放射線防護基準を、防護の考え方や基準について、十分議論して、いいものを提示していただきたい(田中俊一・規制委員長)。」

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 放射線審議会委員はこれまでの8人に、甲斐倫明・大分県立看護科学大学准教授をはじめ5人が補充されました。

 甲斐委員は現在、ICRPの委員を務めており、2008年以降、2007年勧告取り入れに向けた放射線審議会基本部会の部会長を務めています。まさにICRP2007年勧告取り入れの「エース」の登場です。

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 6月16日の放射線審議会では主に二つの問題が審議されました。

 一つは上に書いた水晶体の線量限度引き下げ、もう一つはICRP2007年勧告の取り入れです。

 水晶体が大量被ばくすると白内障を発症します。従来、水晶体の線量限度は年150mSvとされてきましたが、研究の進展によりICRPは2011年4月、「組織反応(=確定的影響)に関する声明」で、5年間の年間平均 20 mSv、ただし年間 50 mSv を超えないこと、 組織反応を防止するためには、最適化が必要」を打ち出しました。

 6月16日には、横山委員(藤田保健衛生大学・准教授)が資料を基に説明し、神谷会長が「(線量限度引き下げの)取り入れを前提とした実施に向けた検討」を求めました。

 にもかかわらず、真っ先に発言した杉村委員(神戸大副学長、医学系教授)は「放射線医学を専門にしている」立場から、IVR(画像下治療)に支障が出るとして慎重な対応を求めました。放射線業務に従事する人々を守る基準を審議する場で、従事者を指揮する「使用者」サイドの意見が真っ先に出されていることは問題です。

 7月21日の放射線審議会で「眼の水晶体の放射線防護検討委員会」設置、委員・専門委員が了承されました。

 7月25日には上記検討委員会の第1回が開かれています。

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6月16日には甲斐委員が、ICRP2007年勧告の現行法制への取り入れについて、2008年以来放射線審議会基本部会で検討してきた内容を簡単に報告しました。

 7月21日には、6月の審議会で委員から出された意見を事務局がまとめ、まず甲斐委員が2007年勧告の要約(ガイドライン)をまとめることになりました。

 次回の放射線審議会は秋以降の予定ですが、いよいよ、2007年勧告の取り入れに向けた審議が本格化しそうです。今後の動きにご注目ください。

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