福島県「県民健康調査」検討委員会、同「甲状腺検査評価部会」に甲状腺がん多発の原因究明を求める申入書を送付しました
こうした状況に鑑み、放射線被ばくを学習する会は8月25日、「県民健康調査」検討委員会、同「甲状腺検査評価部会」宛てに下記の申入書を送りました。検討委員、「甲状腺検査評価部会」員、および福島県知事、保健福祉部長、県民健康調査課長にもお送りしています。
申入書PDFはこちら
2018.8.25
福島県「県民健康調査」検討委員会 御中 同「甲状腺検査評価部会」御中 放射線被ばくを学習する会 連絡先(略) 甲状腺がん多発の原因を究明してください 2016年3月、貴検討委員会は先行検査(1巡目の検査)結果について「中間取りまとめ」を発表、甲状腺がんの多発を認めつつ、何の根拠も示さずに「過剰診断の可能性」を指摘し、「被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小さいこと」などから「放射線の影響とは考えにくい」と評価しました。 その後、本格検査(検査2回目)が進み、以下のように、放射能の影響による多発であることが、明らかになってきました。 1.地域差があります
2.甲状腺がん患者は外部被ばく線量が高い
3.男女比が自然発生の場合と違います デミチク氏らの報告によれば、ベラルーシ小児甲状腺がんの男女比は、自然発生の場合は1:3.7でしたが、原発事故後は1:1.8に低下しています。 日本では20歳以下の自然発生甲状腺がんの男女比は1:4.8との報告がありますが、福島県甲状腺検査・先行検査では1:1.8、本格検査では1:1.2です。ベラルーシの場合と同様、原発事故後は男女比が1に近づいており、放射能の影響が示唆されます。 4.「過剰診断」ではありません がんの過剰診断とは「進行しない、または生涯無症状のがんを見つける(治療する)こと」です。これは進行の遅い成人の甲状腺がんや、ごく初期の微小ながんについて起こり得ることです。韓国では成人において微小な甲状腺がんまで見つけているため、これが問題になりましたが、福島の検査では状況が異なります。 子どもの甲状腺がんは進行が早く、子どもの人生は長く続きます。生涯無症状の根拠はありません。また福島の検査で見つかっている子どもの甲状腺がんは1cmを超えたり、すでに転移浸潤のあるもので、進行しないどころか、すでに進行しています。これらの事実は、福島の検査で見つかっている甲状腺がんが過剰診断ではないことを示しています。 吉田 明・「甲状腺検査評価部会」員は、子どもの甲状腺がんの治療が遅れると、合併症や再発のリスクが高まることを指摘しています。進行して放射性ヨードを用いた場合、二次発がんやそれに伴う死亡率の増加リスクがあることが米国小児甲状腺がんガイドラインで指摘されています。また清水一雄・「県民健康調査」検討委員は、早期発見による内視鏡手術のメリットを指摘しています。根拠のない過剰診断論は子どもに不当なリスクを負わせているのです。 先行検査後、甲状腺がん多発の原因が放射能であることが明らかになったにもかかわらず、本格検査結果確定版の公表後計3回ずつ開かれた「検討委員会」においても、「甲状腺検査評価部会」においても、多発の原因についてはまったく検討されておりません。 貴検討委員会ならびに評価部会におかれましては、以上の事実に鑑み、甲状腺がん多発の原因をすみやかに究明されるよう、申し入れます。 *男女比に関する資料 ベラルーシ:Demidchikら “Papillary Thyroid Cancer in Childhood and Adolescence with Specific
Consideration of Patients After Radiation Exposure” in “Updates
in the Understanding and Management of Thyroid Cancer”, Edited by Dr. Thomas J.
Fahey (2012) http://goo.gl/Vc7TOk 自然発生;169頁、原発事故後;176頁 日本の自然発生:「小児甲状腺癌」菅間 博、病理と臨床31,25-30(2013) 先行検査:第23回検討委員会資料2-2 表4 本格検査:第31回検討委員会 資料3-2 表6 |
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