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2018年8月11日 (土)

厚労省、消費者庁、復興庁が飲料水放射能基準値の誤りを認めました!

8/9三省庁交渉書き起こしはこちら

 三省庁交渉動画・ダイジェスト版はこちら

 2018年3月、復興庁は「放射線のホント」と題するパンフレットを発行、23-24頁では「(飲料水、食品について)世界で最も厳しいレベルの基準を設定」 と大書しています。

0014

 その根拠になっている左上の表がそもそも大嘘です。
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 この復興庁パンフの元になっているのは厚労省、消費者庁のデータなので、私たちは阿部知子・衆議院議員事務所を通じて厚労省、消費者庁、復興庁に申入書を提出8月9日午後、3省庁と交渉しました。交渉参加者は16名、3省庁からは8名でした。
 その結果、3省庁とも飲料水放射性セシウム基準値の誤りを認め、訂正することを明らかにしました。
 
<米国の飲料水・放射能基準は、セシウム134+137=4.2Bq>

 米国では食品の放射能基準はFDA(食品医薬品局)の所管ですが、飲料水についてはEPA(環境保護庁)が所管するSafe Drinking Water Actによって規制されています。
 飲料水中のベータ線・ガンマ線による年間被ばく線量の上限は4ミリレム(=0.04mSv)です(日本は0.1mSv)。
Mcl1_2
 EPAの資料 には核種毎の上限濃度がピコキュリー/リットルで書かれています。
20180809__9p_5
1ピコキュリーは0.037Bqなので、水1リットル当たり、セシウム134は3.0Bq、137は7.4Bq。福島原発事故直後のようにセシウム134と137が等量ずつと仮定すると、セシウム134+137で4.2Bq/リットルになります。

<EUの飲料水基準は8.7Bq>

 EUは2013年の規則 COUNCIL DIRECTIVE 2013/51/EURATOM で、飲料水の放射能基準値を核種毎に決めています。
Eu_edited1 
<コーデックスには飲料水基準値はありません>

 コーデックスは輸入食品の国際規格です。「食品及び飼料中の汚染物質及び毒素に関するコーデックス一般規格 CODEX STAN 193-1995」に、放射性物質の基準値が書かれています。付属文書1によると、コーデックスでは「FAOの統計データによれば、世界各国における主食の平均輸入率は0.1である。(規制値は)ある国が放射性核種により汚染された地域から主食を輸入し続けた場合に、国民の平均年間内部線量が約1mSvを超えないことを保証するために導き出されたものである」と書かれています。
 コーデックスは、食品の中でも主食による内部被ばくだけを考えています。
 実際、例えば米国では成人は年間950kg程度を食べるという前提で計算します("
Supporting Document for Guidance Levels for Radionucleids in Domestic and Imported Foods")が、コーデックスは550kgで計算しています。規制値は当然、高くなります。

<3省庁は基準値の誤りを認め、どう修正するか検討すると回答しました

 米国、EUの規制値を一つずつ指摘した結果、3省庁は飲料水規制値の誤りをみとめました。コーデックスの規制値には飲料水は含まれないことも認めました。
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 「放射線のホント」はこの消費者庁パンフ「食品と放射能Q&A」を元にしています。
厚労省、消費者庁、復興庁でこの記載をどう修正するか、検討することになりました。私たちはせめて1ヶ月後には訂正するよう求めました。

<「緊急時の外国の飲料水基準をそのまま使ってしまった」は本当?>

 なぜ、こんな間違ったパンフが税金で、いわば国策として作られ、配布されてきたのでしょうか?
 厚労省は「2011年に作った緊急時の規制値一覧表が、日本の規制値だけ現在の規制値に変え、外国の規制値は緊急時のままだった」旨の言い訳をしていましたが、これは疑問です。

<米国、EUに、原発事故時の飲料水基準値はあったのでしょうか?>

 厚労省は2011年当時、米国の飲料水・放射性セシウム基準値として「1リットル当たり1200Bq」としていた根拠として、”CPG Sec. 560.750 Radionuclides in Imported Foods - Levels of Concern ” なるFDAの文書をあげています。これは輸入食品の放射能基準値についてのFDAの考え方を説明したものです。食品の話に終始していて、飲料水については一言も書かれていません。どこに飲料水基準が書かれているのか、明らかにすると厚労省は約束しました。
 EUについても同様に根拠の明示を約束しています。

<「有識者10名」の責任は重大>

 復興庁パンフ「放射線のホント」30頁に以下の記述があります。
 【この冊子の作成にあたり、お話を聞いた先生】
早野龍五 東京大学 名誉教授
高村 昇 長崎大学 原爆後障害医療研究所 教授
神田玲子 放射線医学総合研究所 放射線防護情報統合センター長
越智小枝 相馬中央病院内科 非常勤医師
一ノ瀬正樹 東京大学 人文社会学系研究科 教授
開沼博 立命館大学衣笠総合研究機構 准教授
箭内道彦 クリエイティブディレクター
熊坂仁美 (株)SML代表取締役
関 奈央子 ななくさ農園
池田伸之 (株)ジェイティイー グループ本社国内事業本部 観光戦略部長
 この人々の責任は重大です。

<「風評払拭戦略」の正体があらわに>

 「有識者10名」の名前に続いて麗々しく「この冊子は『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』」を基に作成されています」。書かれているURLをクリックすると、「『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』のポイント」なる文書が出てきます。
 「戦略」などとうたっているのを見ると、復興庁・政府は国民と戦争しているつもりなんでしょうか?
 その中身たるや、「科学的根拠に基づかない風評被害や差別・偏見が残っている」から、「広く国民に情報発信することにも重点を置く」と書かれています。
 「科学的根拠に基づかない」情報を「戦略的に」、全国民に発信して洗脳しようという「風評払拭戦略」の正体を、広く伝えていきたいと思います。
申入書
 
添付資料(国際比較・誤りの証拠) :他のブログに飛びます。
(文責・温品惇一)

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コメント

重要かつ何が問題かを分かりやすく専門外の人間にも伝える重大な指摘だと思います。
特に政府広報はふんだんにメディアを活用できない人にとって重要な情報源です。
国民動員に活用されたのではと疑問を感じる内容でしょう。

ただ、一点だけ。戦略は英語のstrategyからです。一般的に政策立案で使う用語であり、
軍事用語ではありません。経済学、経営学でも普通に使う用語です。民間外交戦略や
経済戦略のように。エントリ内のその点の脈絡だけは語弊があるので指摘申し上げます。

すでにお気づきかもしれませんが、同じ表の中に他にも嘘がありますね。
詳細は以下のツイートで:

https://twitter.com/miakiza20100906/status/1030062939120652294
https://twitter.com/miakiza20100906/status/1030066245813424130
https://twitter.com/miakiza20100906/status/1030067999120617472

お読みいただき、ありがとうございます。
日本の食品基準値は食品の50%が輸入されるので、汚染されたものは50%という前提で計算されています。

Masato IDAさま
厚労省資料https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/20130417-1.pdf
の5頁が参考になります。

こういう指摘、素晴らしいです

温品さん、
確かにその通りですね。完全に忘れていました。

牛乳と乳児用食品は 50 Bq/kg のままで良さそうですね。
ツイートでも補足しておきました。ありがとうございます。

https://twitter.com/miakiza20100906/status/1030372278557540352
https://twitter.com/miakiza20100906/status/1030373662921175041

貴会で発行してみえるパンフ「受けて安心 甲状腺検査」を60部注文いたします。
私は、岐阜県の多治見市に住んでいますが、福島原発事故以来、原発ゼロをめざす運動を地域で進めています。その一環として毎月1回、20名ほどで学習会を続けています。次回のテーマが復興庁の出した「放射線のホント」の《ウソ》を学習することにしています。その折り、このパンフも教材にしようと考えています。勿論料金もお支払いしますので、その旨ご連絡ください。
〈送り先〉
 浅沼信人
 〒507-0071 岐阜県多治見市旭ヶ丘8丁目31-6
 固定電話 0572-27-8665  携帯電話 090-3150-1939

よろしくお願いします。

3月29日深夜のテレビ朝日の朝生では、テレビ朝日の記者が、ヨーロッパの飲料水の基準が1000ベクレル、日本は10ベクレルで、ヨーロッパの50倍の厳しい基準になっている。おかしいという論を展開していました。EUでは8.7ベクレルとされているとのことですが、こんなとんでもないウソをテレビ朝日の記者が報告、田原氏がそれが本当であるかのように議論を進めていました。驚くべきことです。厳しい反論をお願いします。

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