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2023年8月23日 (水)

こんなインチキ「正当化」、許せない! 8.22 オンライン記者発表の動画、資料です!

 

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8月18日、放射線被ばくを学習する会など158市民団体が連名で岸田首相に対し、益が害を上回らない(正当化されていない)「ALPS処理水」海洋放出の中止を求める申し入れ書を提出しました。

 同時に同趣旨の公開質問状を、山中伸介・原子力規制委員長、西村康稔・経産大臣にも、提出しています。いずれも回答期限は8月24日(木)正午です。

 

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 8月22日、オンライン記者発表を行い、放射能に係わる「正当化」という概念を共有することができました。当日は8月24日からの海洋放出決定を受けた東電の記者会見と重なり、報道関係者は少なかったですが、80人が参加しました。

  動画はこちら

 当日資料(温品惇一、黒川眞一)はこちら

 プレスリリース、岸田首相への申し入れ書、規制委員長・経産大臣への公開質問状はこちら

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  7.31報告書には、まったく矛盾することが書かれています。「(海洋放出ではなく、)廃炉プロセス全体が「正当化」されるべきだ。従って廃炉の益と害を調べた」(18頁)との主張に続いて、「益について日本政府は、海洋放出は復興・復旧に不可欠と結論づけた」と述べています。ここで「益」とされているのは海洋放出の益です廃炉の「正当化」と言いながら海洋放出の「正当化」を論じていて、支離滅裂です。

 海洋放出しないと、復興できない?! なぜ? まったく根拠がありません。

 「害」には放射線被ばくの影響だけでなく、「経済的、社会的、環境的要因」も含まれるのに、被ばく影響しか勘定していないのです。実にインチキな「正当化」です。

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コメント:何故G7コミュニケの日本語仮訳は

改竄されなければならなかったのか

高エネルギー加速器研究機構 名誉教授 黒川 眞一

1.  温品氏が説明したように、日本政府は、汚染水放出に関する正当化(Justification)を行っていない。

2.太平洋諸国フォーラム(PIF)専門家パネルからの以下のような質問:


「IAEAの安全基準であるGSG-8によれば、放射線防護(のための処置)にはそれによる益と害を考量しなければならない。今回の放出に関しては、太平洋フォーラム諸国における益はゼロであり、害はプラスではないでしょうか?」

の答えとして日本政府が太平洋諸国フォーラム(PIF)に送ったNoteには、

益については、ALPS処理水の放出は2011年の東日本大地震によって影響を受けた地域の再建と復興に不可欠であると日本政府は結論している」、そして、「GSG-9のパラグラフ2.3によれば、正当化は全体的行為について適用されるものであり、放出というような個々の部分的行為については適用されない。日本政府はALPS処理水の放出は個々の部分的行為に相当し、福島第1原子力発電所の廃炉は全体的行為であると理解する」(注:原文は、“ [j]ustification applies to the overall practice and not to individual aspects of the practice, such as discharges”. The GOJ understands that discharge of ALPS treated water corresponds to “individual aspects”, and decommissioning of Fukushima Daiichi Nuclear Power Station (FDNPS) corresponds to “the overall practice”.

と書かれている。

 

3.上で示した、「益については、ALPS処理水の放出は2011年の東日本大地震によって影響を受けた地域の再建と復興に不可欠であると日本政府は結論している」という文章は、札幌で行われたG7環境大臣会議のコミュニケの正式文書である英語によるもの(下に示す)を改竄した日本語仮訳中にでてくる表現とほぼ同じである。なお、この部分は広島で開かれたG7会議のコミュニケにおいてもそのまま用いられている。

 

英文
“We support the IAEA’s independent review to ensure that the discharge of Advanced Liquid Processing System (ALPS) treated water will be conducted consistent with IAEA safety standards and international law and that it will not cause any harm to humans and the environment, which is essential for the decommissioning of the site and the reconstruction of Fukushima.”

 

この英文に対する日本語仮訳は、

 

「我々は、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が、IAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するためのIAEAによる独立したレビューを支持する。」

 

と改竄されている。

 

なお、英語正文を正しく日本語に訳したときの一例を示すと次のようになる。

「我々は、①核種除去システム(ALPS)処理水の放出がIAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、また、②人体や環境にいかなる害も及ぼさないことを確保するために、IAEAによる独立したレビューを支持する。①および②は、サイトのディコミッショニングと福島の復興に不可欠である。」(注)

「サイトのディコミッショニングと福島の復興に不可欠である」ものは、仮訳が示す「多核種除去システム(ALPS)処理水の放出」ではなく、「①多核種除去システム(ALPS)処理水の放出がIAEA安全基準及び国際法に整合的に実施され、また、②人体や環境にいかなる害も及ぼさないこと」である。

注:上でサイトの「サイトのディコミッショニング」と直訳した理由は、ディコミッショニング(decommissioning)という英語の意味からしてサイトという語には接続できないことを示すためである。”decommission”をOxford Dictionary of Englishという辞書で引いてみると、”withdraw (something, especially weapons or military equipment) from service とされており、特に、make (a nuclear reactor) inoperative and dismantle it safely という意味が追加されており、例文として we need to decommission old nuclear power stations が示されている。また、”decommission”の対象はequipment であり、site ではない。また、現在福島第一原発で行われていることは戦艦や航空母艦などの退役や、老齢化して役目を終えた原子力発電所の運転を停止し廃炉にすることではなく、事故によって破壊された原発の事故処理であり、“decommissioning”とはいえない。

 

4.上で書いたことは、なぜ、G7札幌コミュニケの英語正文が、日本語仮訳において、同発電所の廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出」と改竄されなければならないかを明白に示している。このような改竄を行うことでしか、日本政府は、日本国民に対し、「ALPS処理水の放出は個々の部分的行為に相当し、福島第1原子力発電所の廃炉が全体的行為であるので、処理水の放出が正当化されている」と主張できないからである。しかしながら、「全体的行為とされる廃炉」が正当化されているわけでないことを指摘する。

さらに、日本政府はIAEA報告書が明確に記述している、「ALPS処理水の放出の正当化は日本政府によって行わなければならない」のにそれを行っていないのであるから、もし放出するならば、G7コミュニケに書かれている、「多核種除去システム(ALPS)処理水の放出がIAEA安全基準及び国際法に整合的に実施」されないことになり、国際的な約束にしたがわないことになる。

 以上

 

 

ALPS処理水の海洋放出は「正当化」されていないという主張



石田雅彦ライター、編集者

 8月23日には、ライターの石田雅彦さんがYahooニュースで詳しく紹介してくれました。

 

はかりの絵の2段落上、「また、太平洋諸島フォーラム」で始まる段落に、

 「同専門家パネルは『正当化は、行為全体に適用されるもので、放出のような行為の、個々の側面には適用されない』とし、『ALPS処理水の海洋放出に関して日本政府は、福島第一原発の廃炉プロセス全体(ALPS処理水の海洋放出を含む)について正当化されるべき』という見解を出したと説明した。」とありますが、

 「同専門家パネルは」→「日本政府は」です。

 括弧内は専門家パネルの見解ではなく、日本政府の見解です。

<文責:温品惇一>

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コメント

放射線の生体濃縮の健康被害は数年後~十数年。必ず実害となります。熊本の水俣病が同じ例。人の命をゴミ程度に思っているのか?

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