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2024年5月26日 (日)

5.21 オンライン被ばく学習会「『100mSv安全論』に終止符を打つ」の動画、資料です

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21日の被ばく学習会は最多時176名の参加で、大盛況でした。ご協力いただき、まことにありがとうございます。

 INWORKS論文が、日本の現行被ばく「防止」政策=「100mSv安全論」の誤りを証明しています。にもかかわらず、日本では “被ばくでがん死が増えるのではなく、喫煙が原因” と主張する日本の原発労働者の疫学調査(J-EPISODE)が幅をきかせています。

 この状況について、おしどりマコさん、まさのあつこさん、片山夏子さんなどジャーナリストの方々からの質問に、市民研究者の永井宏幸さんから、放射線影響協会(放影協)のJ-EPISODEの問題点が指摘され、充実した質疑応答となりました。

 Zoom動画は https://www.youtube.com/watch?v=-g1pG0GZ0JM 

 スライド資料は下記URLからダウンロードできます。 

振津さん http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com//blog/files/20240521furitu2_c.pdf

建部さん http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com//blog/files/20240521tatebep2.pdf

 

振津かつみさんのお話

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振津さんの「原子力資料情報室」記事はこちら

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この低線量・低線量率被ばくの健康リスク評価は、原子力利用を進めようとする政府、原子力産業と、それに反対する人たちとの間で、長年ずっとせめぎ合いになっている重要な課題の1つです。

原子力産業は、軍事・商業用を問わず、ウラン採掘から廃棄物に至るまで、労働者・住民を被ばくさせながら利益を確保しつつ存続させていくために、データを隠したり、原子力ムラの専門家を動員して、リスクの過小評価を行い、「放射線防護の基準」を設定してきた歴史があります。

その一方、人々の健康を守る立場から良心的なそういう調査をやってきた科学者もおられて、代表的な方がこのアリス・スチュアートさんですね。90いくつで亡くなられましたけど、彼女たちは特に60年代~80年代にかけて低線量・低線量率の被ばく労働者の疫学調査なんかを進める中で、国連科学委員会とかICRPなんかと激しく論争しながら、ちょうどその当時の反核運動・核被害者の運動と結びついて、非常に大きな役割りを果たしました。ここら辺については、中川保雄さんの書かれた「放射線被爆の歴史」を参照していただいたらいいかと思います。

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アリス・スチュアートは、胎内被ばく、お母さんのお腹にいる間にレントゲンを浴びた胎児に、非常に低線量でも小児がんの症例数が増えることを調査し明らかにしたということで非常に有名な方ですが、その後はアメリカの研究者と一緒にハンフォードの核施設労働者の調査もされて、70年代に、低線量被ばくの影響がそれまでの評価よりも10倍ぐらい大きいということを発表して、論争された方です。

 


低線量・低線量率被曝の健康リスク の過小評価の歴史

の概略

1958:国連科学委員会(UNSCEAR)の初めての報告書に、「低線量被曝の影響は、高線量・高線量率の被曝の経験から外挿しなければならない」「時間当たりの配分(線量率)に依る」と低線量・低線量率での影響の「低減化」が言及された。

「高線量・高線量率の被曝の経験」で最も重視されてきたのは、1950年に米軍が主導した原爆傷害調査委員会ABCCが開始した(1975年以降は放射線影響研究所に引き継がれた)広島・長崎の原爆被爆者の調査であった。

1977:UNSCEARは、低LET放射線の急性被曝に対する分割・遷延被ばくの「低減係数」を提唱して、動物実験の結果から係数の値として2〜20を提案。

「国際放射線防護委員会(ICRP)1977年勧告」でも、低線量・低線量率での「リスク低減」を踏まえた線量限度が勧告された。

1980:米国放射線防護委員会審議会(NCRP)は「線量率効果係数」(DREF)を提唱し2〜10とした。

1990ICRPは「1990年勧告」(74項)で、低線量・低線量率被曝による「確率的影響」(ガン・白血病などの後障害)の評価を、「高線量・高線量率における観察から直接に得られる確率係数を2分の1に減らし」、「この低減係数を線量・線量率効果係数DDREFと呼ぶ」ことを提唱した DDREF=2

2006:UNSCEARは、すでに報告され始めていた被曝労働者のデータで、「DDREFが1より大きい」という根拠が薄れてきたため、DDREFを用いるのではなく被爆者のデータに「直線・二次の線量・影響関係」を当てはめて(実質的にDDREF=2と同じ値に)評価すべきとした。米国の「電離放射線の影響に関する委員会」は報告(BEIRVII)でDDREF =1.5とした

その後、DDREFはより下がる方向での国際議論がなされている。

2007: ICRPは、2007年勧告でも「DDREF=2」を踏襲

2012:ICRPは、低線量・低線量率の問題を再検討することを余儀なくされ、「作業部会91」を立ち上げて現在検討中である。作業部会91の議論では、DNAや細胞、動物実験の結果も踏まえて「低線量効果と低線量率効果は異なるので別々に考えるべき」等々、DDREFの概念そのものにも異議が出ている。

2013:WHOによる福島事故の健康影響に関する報告ではDDREF=1が用いられた。

2014:ドイツの放射線防護委員会はDDREFを用いないことを表明した。

                                    ( Werner,et al.,Rad.Env.Biopys.2015,54:379-401参照)6

 

 低線量・低線量率被ばくについては、戦後間もない時期から過小評価されていました。かの有名なアイゼンハワーのAtoms for Peaceが1953年、その後国連科学委員会やIAEAができて、その国連科学委員会の初めての報告の時点(1958年)ですでに、「低線量・低線量率被ばくについては高線量・高線量率被ばくの経験から外挿して推定する」ということが記載されていて、その場合に高線量のリスクを低減化するというのは、過小に評価する。低線量・低線量率の方がリスクが少ないということを前提に評価するということが、1958年の段階でもう報告されています。

その高線量・高線量率の被ばくの経験というのは広島長崎の調査ですね。アメリカが原爆を投下して、ABCCと言われる、軍が主導して調査を始め、そのリスクを元にして低減させる。高線量・高線量率のリスクを、半分とかあるいは1/20とかいう形で低減させることが歴史的にずっとされてきました。

今日問題にするDDREFっていうのはDose Dose Rate Effect Factorと言われていまして、線量・線量率効果係数ですね。それを提唱したのが国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告で、そこでDDREFが2であると。広島長崎の高線量・高線量率で一瞬あるいは短期間にある程度以上の急性症状が出るような被爆をした集団で推定したリスクを、半分にするというのがこのDDREF=2と、2で割るということですね。そういうことを提唱したのが1990年勧告で、 それから以降ICRPは現在に至るまでDDREF=2というのを使って様々な防護基準を提案をしているということです。


低線量・低線量率被曝の健康リスク

直接的に疫学調査で明らかにする研究

「ICRP1990年勧告」などで、広島・長崎の原爆被爆者の高線量・高線量率被曝のデータから外挿して得られる値を「低減」(=過小評価)して、間接的に低線量・低線量率被曝の影響を評価することへの懸念が出された。

低線量・低線量率被曝の影響を直接にヒト被曝集団で調査し、その健康リスクを評価しようとする疫学調査が始められた。

低線量でも統計的に有意な調査結果を得るには、調査対象人数を増やして統計的パワーを上げなければならない。

WHOの傘下にある国際ガン研究機関(IARC)がコーディネートして、国際的な調査が進められてきた。

核施設労働者は線量計で個々人の被曝線量がモニタリングされている「特別な」被曝集団である。

1)カナダ、イギリス、アメリカの3カ国の核施設労働者の調査集団を統合して解析した調査(1995年):95,673人,2,124,526人・年, 全死亡・全ガン死亡の固形ガン死亡の過剰相対リスク(ERR/Sv)は統計的に有意な増加ではなかった。慢性リンパ性白血病(CLL)を除く白血病では有意に増加。

2)日本の原発労働者のデータも含む15カ国の被曝労働者の調査集団を統合した国際共同研究(2007年):407,391人,520万人・年,平均19.4mSv,

全死亡・全ガン死亡でERR/Svが有意に増加。しかし肺ガンを除くと有意差なし。

コホートの不均一性(カナダのコホート)等の問題が指摘された。

3)15カ国の調査のうちの米英仏3国:多くの情報(15カ国調査の60%余)を提供していた米英仏三国の調査集団を統合して、より正確で質の高い調査として新たにデザインされたのがINWORKS。2015年以降、ガン・固形ガン、白血病、循環器疾患などのリスクに関して、いくつかの論文が出されている。

ICRPがそういうことを言い出したことに対して、低線量・低線量率被ばくについては直接に人の集団で調査してリスクを推定するべきだということで、低線量・低線量率の被ばくを直接に人の集団で調査するということが始められたわけです。

ある1国とか1つの被ばく者集団だけでは低戦量の場合には統計的に有意な結果を得るのが非常に難しい、ということで、国際的な調査として始められました。WHOの傘下にある国際がん研究機関(IARC)アイアークって言いますけども、フランスのリオンに本部があります。その研究者たちが中心になって調査を始めたんです。 核施設労働者っていうのは、ある意味非常に特異な特別な被ばく集団ですね。皆さん線量計を着けてモニタリングされ、管理されている。各国のそういう集団を集めてそれを統合して、統計的に有意な報告をしようということで1990年代に始められました。調査されていくとだんだんDDREF=2じゃなくて、ほとんど同じじゃないか(DDREF=1)っていう、だんだん数字を下げていく。リスクで言えば正当に高く評価する方向での国際議論がその後されてきているわけです。

そういう中で、未だにICRP2007年勧告でもDDREF=2を踏襲していますけど、さすがに無視できなくなってきて、ICRPのホームページを見ていただいたら分かると思いますけど、作業部会91っていうのが2012年に立ち上げられ、そこで低線量・低線量率の問題を再検討するということを今やっております。このDDREF=2っていうのが、次に出るICRPの勧告でさらに下がってくるという可能性はありますけども、1まで下がるかどうかは、まだクエスチョンになっています。

一方で、2013年に出たWHOによる福島の健康影響に関する報告では、WHOもDDREF=1を用いています。ドイツはそういう数字で低減するということはしない、ということを表明しました。 UNSCEARはDDREFという係数は用いないが、直線2次線量って言いまして、低線量の方を低く見積もる曲線を用いる、と。やってることは同じなんですけども、そういうことも言い出してきてるということです。

まず始められた調査が、カナダ・イギリス・アメリカの3か国の調査です。9万人を超える労働者のデータなんですけれども、その時点の結論は、線量に応じてがんの過剰相対リスクが上がるということが統計的に有意には証明できなかったんですね。ただ白血病については証明できたという結果でした。

 調査人数をさらに増やしてやろうということで、次に日本の原発労働者も含む15か国の調査がされました。2000年ぐらいからですね。2007年に報告が出てるんですけれども、平均被ばく線量が20ミリシーベルトぐらいです。全死亡・全がん死亡が線量に応じて有意に増加しているということが出て、非常に大きな話題にはなったんですけど、一方でこの全がんから肺がんを抜くと有意差が出なかったんですね。肺がんっていうのは喫煙・タバコと関係するということでタバコの影響も、交絡因子と言いまして関係してるんじゃないかというようなことも言われたりとか、15か国の中でカナダのデータだけが少し大きな数字が出てるということで、調査集団が不均一だということですとか、そういういろんな批判・問題点も指摘されました。

じゃあ次にその15か国の調査をベースにして、そのうちのいろんな情報のしっかりしているアメリカ、イギリス、フランスの3国は核兵器も持っていて、核原子力産業もいち早く進めている。そういう国々のデータをより質の高い解析をするということで、新たにデザインされたのが、今日お話するインワークス(INWORKS)なんですね。2010年あたりから調査が始められて、15年以降、がんとか白血病とか循環器疾患なんかもリスクが線量に比例して高く出るというような報告もいくつか出されてるんですけども、今問題になっているのは主に2021年と2023年、この2つの論文をちょっと紹介したいと思っております。

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INWORKS 2023はこちら 

   INWORKS 2021はこちら

   INWORKS 2015はこちら

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チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西

6.21 対政府交渉のご案内

各省庁への公開質問状

全国署名

 

    
     建部 暹(のぼる)さんのお話Photo_20240525204001









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質疑応答から



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