2017年7月16日 (日)

読売新聞・放射能に関するフェイク社説に関する再度の公開質問状提出

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 読売新聞論説主幹 小田 尚 殿

読売新聞・放射能フェイク社説に関する再度の公開質問状

2017.7.12

放射線被ばくを学習する会

http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com/

anti-hibaku@ab.auone-net.jp

代表・温品惇一

(住所・電話番号・略) 

20170626_edited1 

 6月26日、貴殿は「放射線審議会 確かな情報を分かりやすく」と題する社説を掲載しました。「人の振り見て我が振り直せ」と申しますが、「確かな情報を」とは貴殿こそ心がけるべきことと存じます。

すでに2月9日の社説「放射線審議会 民主党政権時の基準を見直せ」で貴殿は「飲料水中のセシウム量の基準値は、米国が1キロ・グラム当たり1200ベクレル、欧州が1000ベクレルなのに対して、日本は10ベクレルだ」と米国、欧州について間違った基準値を示し、基準を緩めるよう求めました

福島原発事故初期のようにセシウム134137がほぼ等量ずつ含まれている場合、飲料水の放射性セシウム基準値は米国で3.4Bq/L1)欧州で8.7Bq/L2)です。私たちは2月15日、貴殿に公開質問状を提出、謝罪と訂正を求めました。しかし貴殿は327名もの賛同を得た公開質問状に何ら答えることなく、再度、フェイク社説を掲載しました。ペンを武器とする貴殿が公開質問状に答えられないということは、フェイクと自覚しておられるのでしょうか

2度にわたる社説は放射線被ばくの健康影響を軽視するフェイクに溢れています。「復興を加速」するためにはフェイクもいとわない、ということでしょうか574名の第4次集約賛同人名簿とともに626日の貴殿社説に関し以下の公開質問状を提出いたします。7月20日までに文書回答をメールで送信していただくよう、お願いいたします。

1.飲料水の放射能基準値国際比較について

1)6月26日の社説には2月9日の社説にあった「欧州が1000ベクレルなのに対し」が書かれておりませんが、欧州については誤りを認め、取り下げたのでしょうか?

2)米国、欧州の飲料水基準値の誤りを認め、撤回・訂正されますか?

撤回しないなら、基準値の出典をきちんと特定してください。

2.「一般食品の基準が現状にそぐわない」について 

「一般食品の基準は、日本人が口にするものの半数は汚染されているとの前提で算定されている。食品汚染がほとんど検知されていない現状には、そぐわない」と書かれています。

「そぐわない」から、基準を厳しくして被ばくをできるだけ少なくすべきとのご主張ですか、それとも基準をゆるめて漁業などの「復興を加速」しようというご主張ですか?

3.「1ミリシーベルトの呪縛」、「100ミリ・シーベルト以下の被ばくでは、がんリスクは有意でない」などについて

 1)ICRP(国際放射線防護委員会)は「不要な被ばくはできるだけ避ける」ことを基本とし、一般公衆の線量限度を年間1mSvとしています。2007年勧告も同様です。貴殿はICRP2007年勧告の日本法令への取り入れを歓迎しながら、勧告の基本である線量限度1mSv/年を「呪縛」と称して廃止し、20mSvに置き換えるべきとお考えですか? 

「放射線量が着実に減っていることなど、関係地域の実情に沿った法規制を目指したい」とは、「20mSv帰還強制」を法令に取り込みたいということですか?

 2)「100ミリ・シーベルト以下の被曝では、がんリスクは有意でない」とお考えのようですが、「低線量被ばくワーキンググループ」が同様の見解をまとめた2011年以降、大勢の子どもの調査により、自然放射線の累積1mSvでもがんの増加が報告されていること、5mSv程度のCT被ばくでがんの増加が明らかにされていることをご存じですか?

 3)環境省の「統一的な基礎資料」に「100ミリ・シーベルト以下の被曝では、がんリスクは有意でない」と書いてあると主張されています。私どもが拝見したところ、そのような記述は見当たりませんでしたが、同資料の何頁に書かれておりますでしょうか?

4.「WHOなどは『放射線による健康影響が確認される可能性は小さい』との見解を示している」について

世界保健機関(WHO)は2013年の報告書「2011年日本巨大地震と津波後の核事故による健康リスク推定」3)で、避難地域の一部では、女性乳児の甲状腺がんの生涯リスクはベースラインより70%上がり、男性乳児では白血病の生涯リスクがベースラインより7%上がる(8頁 Executive Summary/findings)などと推定しています。

6月26日の貴殿社説には「世界保健機関(WHO)などは『放射線による健康影響が確認される可能性は小さい』との見解を示している」とありますが、出典・引用箇所を特定してください。

以上

1)National Primary Drinking Water Regulations Radionuclides   

 Beta particles and photon emitters(β線光子(ガンマ線)核種):4ミリレム 

2)COUNCIL DIRECTIVE 2013/51/EURATOM  ANNEX Ⅲ 

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3)Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan earthquake and tsunami, based on a preliminary dose estimation 

         
For leukaemia, the lifetime risks are predicted to increase by up to around7% over baseline cancer rates in males exposed as infants; for breast cancer, ;the estimated lifetime risks increase by up to around 6% over baseline rates in females exposed as infants; for all solid cancers, the estimated lifetime risks increase by up to around 4% over baseline rates in females ;exposed as infants; and for thyroid cancer, the estimated lifetime risk ;increases by up to around 70% over baseline rates in females exposed as infants. 
               

飲料水の放射能基準値国際比較について、環境省に公開質問状

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 2017.7.10

環境大臣 山本公一 殿

環境省環境保健部部長 梅田珠実 殿 

環境省環境保健部放射線健康管理担当参事官室 前田光哉 殿 

飲料水の放射能規制値国際比較に関する公開質問状

放射線被ばくを学習する会

http://anti-hibaku.cocolog-nifty.com/

anti-hibaku@ab.auone-net.jp

代表・温品惇一

(住所:略)

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 貴殿らが発行している「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」2016年度版上巻162頁に掲載されている「食品の規制値の比較」には、飲料水の「放射性セシウム濃度の規制値」として、下表のように日本(20124月~)は10Bq/kgコーデックス委員会1,000Bq/kgEU(域内の流通品) 1,000Bq/kg、アメリカ1,200Bq/kgと書かれていますhttps://goo.gl/jCD4mc PDFでは178頁)。これは誤認ではありませんか?

 日本1)WHO2) (国際保健機関)は1日2リットルの飲料水による放射性セシウム経口摂取を年間0.1Svに抑えるため、「放射性セシウム10Bq/L以下」を飲料水の基準としています。

コーデックス委員会CODEX STAN 193-19953)で放射性物質の基準値を定めていますが、これは「国際的に貿易される食品」に限られ、飲料水の基準は見当たりません。

EUは同じく飲料水によるセシウム134137経口摂取を年間0.1mSvに抑えるため、134137の実効線量換算係数の違いを考慮し、セシウム1347.2Bq/L、セシウム13711Bq/Lとしています4)。福島原発事故初期のようにセシウム134137がほぼ等量ずつ含まれている場合、8.7Bq/Lです。

米国は、Safe Drinking Water Actにより、飲料水による放射線被ばくを4ミリレム(=0.04mSv)に抑えるとしており5)福島原発事故初期のようにセシウム134137がほぼ等量ずつ含まれている場合、3.4Bq/Lと計算されます。

「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」にあるように1,200Bq/Lの飲料水を1年間飲んだら、(600Bq/L×2L×365日)×1.9×10-51.3×10-5mSv/Bq14Svも被ばくします。

 以上に鑑み、下記の2項目について質問いたしますので、720日までに文書回答をメールでお送りいただくよう、お願いいたします。

1.環境省環境保健部放射線健康管理担当参事官室が筆頭著者を務める「放射線の健康影響等に関する統一的な基礎資料」上巻162頁の表に掲載されているコーデックス委員会、EUおよびアメリカの飲料水基準の誤りを認め、訂正してください。

  誤りでないとお考えなら、各基準値の出典を明らかにしてください。

2.今年2月9日の読売新聞社説には「飲料水中のセシウム量の基準値は、米国が1キロ・グラム当たり1200ベクレル、欧州が1000ベクレルなのに対して、日本は10ベクレルだ」と主張、626日にも同趣旨の社説が掲載されています。消費者庁の「食品Q&A」(第10版)6)19頁にもEUの飲料水基準1,000Bqと書かれています。

上記の訂正を広く公表し、国民・政府機関に周知してください。

 なお、参考資料の該当部分を抜粋し、資料として添付します。

以上

1)食品中の放射性物質の新たな基準値http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf 

Leaflet_1203291

2)WHO 飲料水水質ガイドライン(第4版、日本語版) 216

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3)食品及び飼料中の汚染物質及び毒素に関するコーデックス一般規格(厚労省訳) 50-51

 4)COUNCIL DIRECTIVE 2013/51/EURATOM  ANNEX

Eu_council_directive_3

5)National Primary Drinking Water Regulations Radionuclides

 Beta particles and photon emitters(β線光子(ガンマ線)核種):4ミリレム

6)「食品と放射能 Q&A 19頁」

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2017年7月 2日 (日)

政府は線量限度1mSvを守れ!;「あれから6年・・・放射能はいま No.3」

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 PDFはこちら
 原発近くも避難指示解除
 3月末~4月1日、福島第一原発近くの富岡町、浪江町、飯舘村、川俣町の、一部の避難指示が解除されました。
浪江町では下図の水色と黄色の区域の避難指示が解除されましたが、大部分は帰還困難区域です。

浪江町中心部で年間6mSv超で、管理区域相当!
Photo_2  私たちは5月下旬に浪江町避難指示解除区域の空間線量を測定しました。測定器は堀場製作所のRadiで、文科省の測定器「はかるくん」と同等(性能レベル)とされています。事故前は人口の多かった常磐線浪江駅西側の川添地区では年間6.2mSv。5.2mSvを超え、管理区域相当です(上図)。浪江町に戻っている人はほとんどいませんでした。

線量限度は空間線量1mSv/年
 「原子炉等規制法」などの法令で、一般公衆の線量限度は空間線量1mSv/年と決められています。第一原発事故前の福島県の空間線量は0.3mSv/年でした。線量限度は誰も超えてはならない「限度」です。屋外の時間が長い人でも限度を超えないことを保証するため、一人一人の被ばく線量ではなく、空間線量で1mSv/年と決められています。政府には、1mSv/年を超える地域に住む人々が避難できるようにする責任があります。

線量限度を超えているのに避難指示解除、賠償打ち切り!?
 1mSv/年を超える地域に住むことを強制するのは違法行為です。これまで、避難指示解除された地域は1年後に賠償を打ち切られてきました。セシウム137の半減期は30年。来年4月になっても空間線量はほとんど変わらず、線量限度オーバーのままです。
住むところを追われ、線量限度を超えて帰れないところに「帰れる」と言われ賠償を打ち切られるーーこんな理不尽なことを許してよいのでしょうか。

2017年6月25日 (日)

7.23第38回学習会『「土の除染」より「心の除染」?』

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 チラシPDFはこちら

 2011年5月、福島県伊達市は他に先駆けて「除染」を打ち出しました。「除染」が国の方針となる中で、のちに原子力規制委員長に就任した田中俊一氏とタイアップし、さらに「全市除染」「ガラスバッジによる健康管理」などを打ち出しました。

 しかし6年後のいま、伊達市の約7割は除染されないままで、市長は「(それでも安心できるよう)心の除染が必要」と言います。「除染先進都市」と呼ばれた伊達市は、住民の健康被害を防ぐことよりも、子どもをはじめ住民を「逃がさない」ことを第一に考えてきたのでしょうか?

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 Photo_6 今回は伊達市出身のフリーライター・黒川祥子さんにお話しいただきます。黒川さんは伊達市のお母さんなどに取材を重ね、伊達市の動き、お母さんたちの運動と汚染地での生活を強いられている苦悩など、克明に綴った『「心の除染」という虚構』を今年2月に出版されています。
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「廃止措置三兄弟」(春橋哲史さん):6.18第37回被ばく学習会報告その2

 2017年6月18日の第37回被ばく学習会は46名の参加で盛況でした。ありがとうございます。

 「6.5 福島県民健康調査検討委員会報告」(温品惇一)、特別報告「プルトニウム被ばく事故」(山内知也・神戸大教授)に続き、春橋哲史さん(規制委員会ウォッチャー)に「核との泥沼の戦い・撤退も放棄もできない『廃止措置三兄弟』 ~福島第一・もんじゅ・東海再処理施設~」についてお話しいただきました。
 
お話しする前に
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資料から:「『カルチャー・ショック』⇒2012年前半に国会事故調を傍聴し、
『直接知る』ことの大切さを実感」
 フクイチを本格的に追いかけるようになったのは、国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の委員会を傍聴してからです。経産事務次官・松永和夫や、官房長官・枝野幸男、東電社長・清水正孝(肩書は事故当時・敬称略)を生で見ました。「意思決定を下した当事者」を直に見るのは初めてでした。国会事故調は記者会見もノーカットでユーチューブに載せていました。会議や会見をノーカットで傍聴・視聴したのは初めてで、「報道を通じて間接的に知る」のが当たり前だった私にとって「直接知る」のは、一種のカルチャーショックでした。「直接知る」事の大切さを実感しました。

 これからの責任:放射性物質を環境中に放出し続けたり、放出させる可能性が高止まりしている原子力施設は放置できない。3.11時点で生まれていなかった世代や、有権者として意思表示できなかった世代に、責任を押し付けてはいけない。
 自分が生きる為にも、核施設のリスクに無関心でいる事は有り得ない。

福島第一原発・概要(資料1)

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  • フクイチは東京ディズニーランド6.9個分の敷地に余裕がない。
  • 福島第一原発は、法的には「特定原子力施設」
  • 廃炉・汚染水対策に関する組織図。関係機関の名称と役割分担。
  • 廃炉・汚染水対策「大きな三つの課題」の達成目標年度と現状の進捗。  
  •   デブリ(溶融燃料)取り出し
  •   SFP(使用済み核燃料プール)からの燃料棒取り出し
  •   建屋のドライアップ(滞留水のくみ上げと止水)
  • 個別対策や、その他のリスク対策は資料2,3へ
廃棄物対策(液体・固体)(資料2)
 動画はこちら
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 この資料での説明内容の概要の概要
▶汚染水対策は、建屋のドライアップを含めた多くの課題を解決する為に実施。
▶三つの基本方針→ 「(汚染源を)取り除く」「(汚染源に)近づけない」「(汚染水を)洩らさない」
▶汚染水対策の具体的な目標
 ―建屋のドライアップに向けた「地下水流入量の抑制」「建屋滞留水の汲み上げ」
 ―リスクを下げた状態で水を安定的に貯留する為に「水の浄化処理」「溶接タンクの増設」
 ―放射性物質の環境中への放出を減らす為に「海洋への流出の抑制」「海洋排水前の浄化処理」
▶増加ペースは鈍っているが、タンク内貯留水は増加し続けている。タンク増設は止められない。
▶固体廃棄物保管量は増加し続けている→ 貯蔵庫等の整備が遅れており、屋外保管せざるを得ない。
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潜在的ハイリスク(一例)(資料3)、人員(資料4)
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この資料での説明内容の概要の概要
▶様々なリスク要因の中から特に5つを紹介(春橋の独断で抽出)。
 -1・2号機排気筒(解体困難)
 -メガフロート(解体困難)
 -AREVA(アレバ)スラッジ(抜出し困難)
 -HIC(ヒック)内のスラリー(抜出し困難)
 -津波対策(一部のみ実施)
▶全ての対策・作業は、被曝労働が前提。
 -入域作業人数・被曝線量・労働環境等の概要
 -敷地内の装備と線量
▶労働安全
  -発災以来の死亡・負傷人数一覧(東電が公表・認めているだけで16人が死亡)
  -労働局の指導件数は参考として添付。

福島第一原発・まとめに代えて
 動画はこちら
 資料はこちら
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参考資料:放射性セシウムの放出量・降下量
 説明は省略
 資料はこちら
 学習会後、春橋さんから降下物測定に関する資料をお知らせいただきました。
関連箇所を図示します。
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(筆者注) 「月間降下物」は降下したチリや雨水に含まれる放射性物質を測定するので、雨が多い時期は降下物も多くなります。降下物量の変化は、福島第一原発からの放出量の変化を意味するとは限りません。

日本原研(JAEA)の概要(資料5)、東海再処理施設の概要とリスク(資料6)
 動画はこちら
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 東海再処理施設は1,526億円の建設費を投じて、茨城県東海村に建設されました。現在は「核燃料サイクル工学研究所」と称しています。
 耐震性に疑問があり、2014年9月、JAEAは規制委員会に対し、廃止の意向を表明、2016年11月30日には70年間のロードマップを提出しています。廃止するのに70年かかるということです。
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 現在は電力会社との再処理契約が終了し、2007年に使用済み燃料1,140トンの切断を終了しましたが、硝酸などに溶かした高放射性廃液約340トン(400京ベクレル)が残されています。その大部分は長寿命の核種と思われます。
 福島第一原発事故で放出されたセシウム137の総量は、当時の保安院推定で1.5京ベクレル。東海再処理施設には、その267倍もの放射能が液体で残されています。
 耐震性への不安から2007年12月以降、ガラス固化は停止していましたが、2013年12月、規制委員会は「施設のリスク低減のため、高放射性廃液のガラス固化作業を再開する」ことを了解しました。液体のままだと水の放射線分解で発生する水素を除くため、絶えず空気を送り込む必要があり、停電で水素爆発のおそれがあるからです。ガラス固化体にすれば、自然通風で冷却可能となります。
 ところがその後、ガラス固化作業は何回もストップ。今年1月30日に固化作業を再開したものの、2月15日にはクレーン停止で作業ストップ。再開すると今度は6月上旬に溶融炉を停止。再開は早くても2019年、ガラス固化完了は2028年度の見込みです。
 また、使用済み燃料棒を切断、細かくした際の金属の破片などの高放射性固体廃棄物、200ドラム缶換算で約6,700本が残されています。線量が高いので水中保管で放射線を遮蔽しています。
 大部分は取り出しが考慮されておらず、まずクレーン付き取り出し建屋を作らないと取り出せません。取り出すまでに水が抜けたら、高線量でヒトが近づくことはできなくなるでしょう。
 規制委員会は「東海再処理施設等安全監視チーム」を設置、JAEAは2017年6月を目途に、廃止措置計画を規制委員会に提出するとしています。
(この項 文責:温品惇一)

「もんじゅ」の概要とリスク(資料7)
 動画はこちら
 資料はこちら

 約1兆2,000億円を投じた『高速増殖炉・もんじゅ」は2016年12月、廃止措置移行が決定されました。
 JAEAは、燃料棒取り出しに5.5年、廃止措置完了には30年かかるとしていますが、その「計画」自体、あやふやなものです。
 燃料棒を取り出そうにも、「燃料棒交換機等は長期停止中で、健全性確認のための点検が必要(JAEA)」とされています。さらに以下のような課題を抱えています。
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(この項 文責:温品惇一)

原研(JAEA)所管施設、全体のまとめに代えて
 動画はこちら
 資料はこちら

日本原研(JAEA)所管施設・まとめに代えて
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全体のまとめに代えて
ー「監視不在の原子力の利活用」が招いた自業自得のリスク
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2017年6月20日 (火)

水素ガスによるプルトニウム内部被ばく事故;特別報告(山内知也・神戸大教授)

 6月18日の第37回被ばく学習会で、「プルトニウム被ばく事故」について、山内知也・神戸大教授に特別報告していただきました。

 動画はこちら
  資料pdfはこちら
  山内さんの音声はこちら
    Windows パソコンの方は、ダウンロードしたmp3ファイルを右クリック→プログラムで再生→Windows Media Playerで再生
Photo_2 山内知也・神戸大教授

Ecrr2010 山内さんは宇宙線の測定などをされている放射能の専門家で、2011年にECRR(ヨーロッパ放射線防護委員会)の2010年勧告を監訳、出版されています。
 2016年12月、第33回被ばく学習会でお話しいただいています。

 以下は、山内さんの特別報告を温品の責任においてまとめたものです。
「報告者」とは山内さんです。

 肺測定時に体表面に残ったプルトニウム239は、最大3,390Bq
 JAEA(日本原子力研究開発機構)大洗研究開発センター・燃料研究棟で6月6日に起こった事故の後、被ばくした人たちは除染され、肺モニタで測定の結果、事故6時間後の肺から22,000Bqのプルトニウム239が検出された、と発表されました。
 これはプルトニウム239を36万Bq吸入したと推定され、50年間の内部被ばく線量は12Svと計算されました。
 7日に放医研で再測定したところ、肺にはプルトニウム239が検出されず、体表面にプルトニウム239が検出されたことから、「12Sv被ばく」は否定されたかのように報道されています。
 では、22,000Bqは体表面にあったのでしょうか?
 
 上の表左端の「1」 は、貯蔵容器点検作業をした本人です。放医研で体表面を測定したところ、下あごが一番汚染されていて、140cpmだったということです。
 アルファ線は射程が短いので、肺にあるプルトニウム239から出るアルファ線は体表面には届きません。

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 体表面測定に使われたTCS-232Bの受感部面積と計数効率から計算すると、140cpmは、0.20Bq/cm2です。
 
 身長170cm、体重60kgの成人の体表面面積は1.695m2です。
 一番汚染密度の高い0.2Bq/cm2と仮定しても、体表面全体のプルトニウム239は3,390Bq。除染した後、体表面に22,000Bqも残っていたはずはないのです。
 22,000Bqが体表面にあったとすると、体表面の汚染は、1.3Bq/cm2。919cpm程度になったはず。上の表の下あごと右手では20倍も違うので、体表面の汚染の高い所では数千cpmとなり、けたたましく警報音が鳴り響き、絶対に気づきます。

●放医研肺モニタの検出限界は、1940年代より劣る?
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肺モニタ(放医研 2017.6.12発表資料より)
 放医研は肺モニタのプルトニウム239測定下限を5,000Bq~10,000Bqと発表しています(「肺モニタによる測定状況について」)。
 
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 1945年頃の測定値や1980年代までの中国でも数百Bqレベルで測定されているのに、現代の測定下限が5,000~10,000Bqとは、信じられません。
 事故6時間後に肺に22,000Bqで12Svですから、測定下限の5000Bqあっても分からないとすると、2.7Svの内部被ばくがあるかも知れない、ということになります。
 ちなみに、6月13日、被ばくした5人全員が退院しましたが、6月19日、全員の尿からプルトニウムが検出され(検出量は未発表)、再入院しています。

アメリシウム241の量からプルトニウム239の量が分かる
 肺モニタで22,000Bqが検出された人から、アメリシウム241が220Bq検出されています。
 アメリシウム241はプルトニウム241のベータ壊変によって生じます。アルファ壊変してネプツニウム237になりますが、その半減期は432.2年なので、プルトニウム239とアメリシウム241の比は当分変わりません。
 放医研での測定では肺からプルトニウム239は検出されなかったと発表されていますが、アメリシウム241は検出されています。その量は未発表ですが、当然発表すべきです。アメリシウム241の100倍のプルトニウム239が肺内にあったのです。

ポリエチレンにアルファ線が当たって水素ガスが発生!
 プルトニウム239は崩壊するとアルファ線(ヘリウムの原子核)を出すので、ヘリウムガスが発生します。
Photo ポリエチレン容器
 プルトニウムは上の写真のようなポリエチレン容器に入れられ、その外側に二重のビニール袋、一番外側が黄色の金属容器でした。
 ポリエチレン容器の中身がすべて酸化プルトニウムとすると、26年間に発生するヘリウムガスは100cm3。
 
 他方、ポリエチレンなど高分子にアルファ線が当たると水素ガスが発生します。その量は3,900cm3と計算されます。
(注)6月15日、JAEA発表によると、ポリエチレン容器の中身は金属換算でプルトニウム26.9%、ウラン73.1%です。放射能強度は上の計算の約0.3倍になるので、ヘリウムガス 30cm3、水素ガス 1,170cm3となります。
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文責:温品惇一

2017年6月12日 (月)

浪江町避難指示解除区域も6mSv超え。モニタリングポストの線量は半分:6.6報告会

 6月6日夜、文京区・アカデミー茗台・学習室Aで「6.6 浪江町空間線量測定報告会 測った・見た・聞いた」を開催しました。参加者は22名でした。

 当日、準備不足で開始時刻が遅れ、動画再生にも支障を来し、申し訳ありませんでした。

避難指示解除された地域の空間線量、年間6mSv超も
 最初に、「浪江町避難指示解除地域の空間線量」について、温品が報告しました。
 動画はこちら
 資料はこちら
 浪江町は今年3月31日、「避難指示解除準備地域(下図水色地域)」と「居住制限地域(同黄色地域)」の避難指示が解除されました。
 浪江町の大部分は山林で、「帰還困難区域(同ピンク色地域)」です。
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  https://goo.gl/dJi7tQ より改変

 避難指示解除された区域の空間線量を堀場製作所の放射線測定器Radiで測定しました。Radiは文科省の「はかるくん」と同等の性能とされています。

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 事故前には人口の多かった常磐線浪江駅西側の川添地区の空間線量は6.2mSv/年。 5.2mSv/年を超え、管理区域相当です。

 一般公衆の線量限度は1mSv/年と「原子炉等規制法」などの法令で決まっています。

 1mSv/年を超える地域の人々が避難できるようにするのが、政府の責任です。

フレコンバッグ置き場の不思議

 続いて瀬川さん(高木学校)からの報告です。
  動画はこちら
  資料はこちら
 
 浪江中学校(
川添地区)近くで突然、16mSv/年(1.88µSv/h)もの高線量が測定されました。ちょっとした高台で、眼下には除染された田んぼの先に、広大なフレコンバッグ置き場が広がっていました。
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 フレコンバッグ置き場に近づくと、意外や意外、空間線量は下がってきます。
 「立入禁止」の表示もないようなので中に入ってみると、1mSv/年程度です。
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 環境省のガイドラインでは、下図のように、まず「汚染されていない土壌」を入れたバッグを並べ、囲われた空間に「除去土壌」を並べます。何段も重ねたあと、上にまた「汚染されていない土壌」を盛り、遮蔽することにしています。
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                            「除染関係ガイドライン 第4編(環境省)」より 

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 フレコンバッグをどんどん積んでいる段階では、横方向への放射線は遮蔽されていますが、斜め上方向~真上方向には遮蔽がありません。遠く離れた高台で、16ミリ/年にも達することになるのです。
測定の後ろから撮った写真と会った人
 3番目の報告は O.ちゑ さんです。
 動画はこちら
 資料はこちら
 人がほとんど帰っていない町、家屋が解体撤去されたことを示す立て札、モニタリングポストの異様に低い値、帰還されたごく少数の方のお話など、紹介していただきました。

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福島の被災農家と農業はどうなるのか
 4人目は小川昌之さんの問題提起です。
 動画はこちら
 資料はこちら

 
肥沃な層を除染ではぎ取られた農地、汚染された水源ダム、農業をあきらめる農民たち・・・。福島の、日本の農業はこれからどうなるのか?
 一緒に考えてみてください。
浪江空間線量測定の動画
 浪江町空間線量測定を終始撮影した映像班が、動画の一部を編集・再生してくれました。
モニタリングポストの線量は異常に低い
 
質問時間の冒頭、モニタリングポストについて、温品から報告しました。
 浪江町を歩きながら空間線量を測定している間に、9つのモニタリングポストを見かけました。その空間線量をRadiの値と比較してみると、とんでもないことが分かりました。

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 上の図にあるように、モニタリングポストには2種類あります。
 上図左のリアルタイム型は地面に直接固定されています。表示される空間線量は、聖テモテ幼稚園のものを除いて、Radiの値の0.74~0.85、平均0.79でした。
 
 他方、上図右側の可搬型は、四隅のコンクリートブロックの上に鉄板を敷き、その上に放射線検出器が置かれ、通常、周囲を金網で囲われています。その表示値は、Radiの値の0.51~0.53,平均0.51でした。
 
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 可搬型モニタリングポストの中に、金網で囲われていないものがあったので、なぜ空間線量が半分に表示されるのか、調べてみました。
 モニタリングポストから少し離れた場所でRadiで測った空間線量を1とすると、モニタリングポストの放射線検出部の位置では、Radiの値は0.76になりました。四隅のコンクリートブロック、測定器の下の鉄板とその下の構造物などにより、測定器の下からの放射線が遮蔽されていると思われます。
 モニタリングポストが表示する空間線量は、Radiの値の半分です。下からの放射線を遮蔽して4分の3になった線量を、さらに3分の2にして表示すると、3/4×2/3=1/2になります。可搬型モニタリングポストは、2段階で半分の空間線量を表示する仕組みになっているようです。
文責:温品惇一

2017年5月30日 (火)

死に至る内部被ばく-5.13第36回被ばく学習会報告・その2

 2017年5月13日の第36回被ばく学習会「内部被ばくはこうして隠された」で、ヒロシマ・ナガサキ、ビキニの内部被ばくの科学的事実について、温品が報告しました。

 動画はこちら
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入市被爆者も、毛がごっそり抜け、紫斑が出て、死亡
 Hida_2 最初に、入市被爆者の内部被ばくについて、ヒロシマで被爆者の治療にあたられた肥田舜太郎さんの証言を、「内部被ばくを生き抜く(鎌仲ひとみ監督)」特典映像で聞きました。
 「ピカに会った(直接被爆した)」人々は、粘膜からの出血、高熱、口の中の腐敗・悪臭、紫斑、ごそっと脱毛など、放射線被爆の急性症状を示して次々に亡くなりました。
 原爆投下時には広島市内におらず、1週間後、1ヶ月後などに市内に入った「入市被爆者」も、同様の急性症状を示し、亡くなっていったそうです。「死の灰」の放射能を体内に取り込んだ内部被ばくによる死亡です。

外部被爆は1mSv未満でも、内部被ばくで急性症状
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 内部被ばくによる急性症状は、広島の於保(おぼ)医師の調査でも裏付けられています。上図の大部分、線で結ばれた点は、爆心地からそれぞれの距離で屋内被爆した方々の、急性症状発症率を示しています。観察した急性症状は、下痢、紫斑、脱毛の3種類です。 
 下痢は爆心地から5キロも離れた地点で被爆した方でも20%に発症しています。ヒロシマの場合、爆心地から3~3.5キロで外部被爆線量1mSvと推定されています。
 上図右端の4点は、入市被爆者の急性症状発症率です。入市被爆者の約37%が下痢になっています。
(学習会で配付・映写した資料ではこの図のタイトルが「入市被爆者の急性症状」となっていました。表示されているデータの大部分は屋内被爆者なので、正しいタイトルは「急性症状の発症率」です。お詫びして訂正いたします。)

放射性微粒子の正体は
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 内部被ばくは放射性微粒子の吸入などによるものでした。
  大滝慈(めぐ)・広島大教授らは、8月6日に入市した陸軍幹部候補生のうち、粉じんを吸い込んだ兵士の発がん率が高いことを明らかにしています。
 「原爆炸裂後の爆心地付近では土埃で太陽光が遮断され暗闇になったとの多数の報告がある」そうです。大滝教授らは、家屋の土壁や、屋根瓦の下に敷かれていた粘土のマンガン、アルミニウムが原爆の中性子で放射化され放射性微粒子となって衝撃波と爆風で舞い上がって飛散したと推定しています。
 放射化されて生じたアルミニウム28の半減期は2.2分、マンガン56の半減期は26時間です。肥田さんの証言に、8月6日の1週間後に入市し、急性症状を呈した女性の話があるので、他の核種も内部被ばくに関与していると思われます。

内部被ばくの線量推定
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 内部被ばの線量はどのくらいだったのでしょうか。
 上の表のように、さまざまな方法で調査され、300mSv~1500mSvと推定されています。

実証されたプルトニウムによる内部被ばく

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 肺などの組織標本のオートラジオグラフィーで乳剤中の飛跡の長さから、アルファ線のエネルギーが分かります。
 長崎大学の七条和子らは、長崎で急性被爆し死亡した症例の肺、腎、骨などの組織標本に、プルトニウム239が存在していることを確認しています。

「死の灰」の怖さを痛感させたビキニ実験
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 ヒロシマ・ナガサキで目立ったのは、熱線と爆風、放射線の急性被爆による被害でした。
 「死の灰」の怖さが初めて痛感されたのは、1954年3月1日のビキニ水爆実験でした。

原爆と水爆
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 原爆が核分裂によるエネルギーを利用しているのに対し、水爆は重水素と三重水素(トリチウム)の核融合によるエネルギーを利用しています。
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ビキニ「ブラボー」実験
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ビキニ「ブラボー」水爆実験の動画はこちら

 1954年3月1日、マーシャル共和国ビキニ環礁で行われた水爆実験は「ブラボー」実験と呼ばれました。米軍の計画では爆発力は6メガトンでしたが、実際は15メガトンでした。その結果、第五福竜丸が被爆する羽目に陥ったのです。
悪魔の光(「ビキニ事件の表と裏」大石又七著 より)
 (午前4時頃)「サア-」と夕焼け色が空いっぱいに流れた。
 驚いて外に飛び出すと、右の地平線から左の地平線まで、空も海も船もその色にそまっている。そして、その色が消えないのだ。
 2、3分してその光は消えた。
 (7,8分後)大音響が海底から突き上げてきた。「ドドドドドー、ゴー」海面を伝わってくる爆発音ではない、地鳴りだ。足元を震わすごう音が、海全体を包み込んで下から突き上げてきたのだ。
 12、3分が過ぎたと思う。空は明るくなり、光が出ていた西の水平線を見ると、そこには入道雲を5つ、6つ重ねたような巨大なキノコ雲が空を突いていた。

死の灰(「ビキニ事件の表と裏」大石又七著 より)

 2時間ほどが過ぎただろうか、白い物が空からぱらぱらと降り始めた。
 ちょうどみぞれが降ってきたという感じだった。
 やがて風を伴い、雨も少し交じってたくさん吹き付けてきた。
 みんな目を真っ赤にして、こすりながら作業をした。水中眼鏡をかけている者もいた。鉢巻きをした者は頭の上に白く積もらせ、デッキの上には足跡がついた。
 唇につくものを舐めてみると、溶けないで砂を舐めているようにジャリジャリして固い。
 白い灰はとぎれることなく降り続いた。
 6時間ほどかかってようやく縄(はえ縄)を揚げ終えた。灰も最後まで降り続いていた。
 体やデッキに積もった灰を海水で洗い流し、隠れるように船室にもぐり込んだ。

被ばくした船員たち

 ・3月1日、「白い粉」を全身に浴びながら作業

 ・灰を浴びた全乗組員(23名)は人によって多少の差はあったが、いずれもその日の夕方から身体に異常を覚え始めた。しかも乗組員はそれより焼津に帰港するまでの約2週間、船内にあって体外より強い放射線の照射を受け、皮膚表面に放射性物質が附着し、さらに飲食呼吸によって体内にまで放射性物質が侵入したのであった。
・その結果、皮膚には主としてβ線によるやけどや脱毛を起こし、骨髄その他は体外よりのγ線や体内に沈着した放射性物質の放射線による障害を受け、かくして全員が不幸にも『放射能症』にかかったのであった。
 (『ビキニの灰の分析メモ」木村健一郎 より)

・3月14日、焼津港に入港。焼津共立病院で「原爆症」と診断されました。

・第五福竜丸の甲板から、強い放射能を検出

・乗組員の体から、放射能測定器の針が振り切れるほどの反応

白血球の減少

 3月⒖日、皮膚症状、白血球減少のひどい船員二人が東大病院に移送され、「放射能症」と診断されました。
 その後も白血球減少が続き、3月28日には全員が東京の病院に転院しました。(以上、「ビキニ水爆被災事件の真相」安斎育郎・監修)

 「だるさがひどく、白血球の数も3千、2セント下がり始め、体に力が入らなくなってきた。千を割って、百大になった者もいた。」(「死の灰を背負って」大石又七)。

久保山さんの死
 
久保山愛吉さんは白血球減少症で輸血を繰り返していましたが、6月ごろから黄だんの症状を示し、9月23日、亡くなりました。40歳でした。
 各臓器の放射能を調べた結果、骨に集まるとされている
ストロンチウムが、肝臓にも集まっていたことが明らかになりました。
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 上の表にセシウムが出てこないのは、放射能測定用の試料を作る過程の灰化で消失した可能性があるということです。

乗組員の死亡相次ぐ
 1975年には二人目の船員が肝硬変で死亡。47歳の若さでした。
 その後も乗組員の「早すぎる死」が続き、2013年10月現在、乗組員23人中16人が亡くなっていたそうです。
 肝硬変、肝臓がんがおおく、輸血で感染したウイルス性肝炎が原因とされています。
被ばく線量の推定
 
第五福竜丸の入港後、船体各部の線量減衰状況と、各人の居た場所の聞き取りから、外部被ばく線量は1.6~7シーベルトと推定されました。

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 被ばくしたマグロ漁船・貨物船乗組員で今まで生き残った人の染色体異常率からは、平均91mSv、最大 295mSvと推定されています。 

 (「元船員らの被ばくを追う」より)

死の灰の放射能

 死の灰は直径0.1ミリ程度。サンゴ礁のかけらでした。

 その放射能は1.4キュリー/グラムで、1キログラム当たり50兆ベクレルを超えるほど強力なものでした3月1日午前7時換算)

 その放射能からウラン237が検出され、この時の核実験が原爆ではないことが明らかになりました。
 「燃えないウラン238」に水爆の早い中性子が当たると、
ウラン237とつの2中性子ができます。ウラン237は他のウラン同位体と違ってβ線を出すので、ガイガーカウンターでも検出できました。半減期は6.7日です。

ガイガーカウンターで分かるほど、魚が汚染されていた

 3月14日、焼津の魚市場でマグロなど9.4トンが競売にかけられ、東京、大阪、神戸などへ出荷されました。

 3月17日、第五福竜丸や魚市場に残っていたマグロをガイガーカウンターで測定すると2,000cpm(1分当たりのカウント)。バックグラウンドは20cpmでしたから、その100倍です。
 現在のバックグラウンドは約0.04μSv/hですから、マグロに測定器を向けたら4μSv/hだった、ということです。

 3月30日、厚生省が決めた検査基準は、人体は500cpm以上の場合、精密検査。 2,000cpm以上の船体は「専門家の意見を聞き、処分」。10センチ離れて100cpm以上の漁獲物は、汚染物として廃棄処理する、というものでした。

 全国18漁港で廃棄魚類492トン、魚を廃棄した船856隻に及びました。

俊鶻丸の派遣

 1954年4月、農林省水産庁が海洋調査を決定しました。米国に補償を迫るためデータを集めることが目的でした。
 研究者を乗せた調査船・俊鶻丸(しゅんこつまる)は5月15日に出航し、5月30日、31日、ビキニ環礁の1000キロ東の海水から、毎分146cpm、450cpmを検出しました。これは「想定外」の大発見でした。
 水爆実験で飛散した膨大な放射能も、太平洋の海水で薄められるとの予想の下、ストローズ・米原子力委員長は「実験場のごく近くをのぞいては、ビキニ海域の海水には放射能はない」と言っていたのです。
 実際は、海の表面から50~100メートルまでは暖かく比重の小さい海水で、下の海水とは混じり合いにくいのです。

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 そのため、ビキニ環礁周辺では、上の図に見られるように、経度で20度にもわたる広範囲の海水が11Bq/Lを超える汚染を示していました。
 ちなみに、海水の放射能は通常、せいぜい1ミリベクレル/L程度です。

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汚染魚に最多の放射性核種は亜鉛65

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 亜鉛65なんて、聞いたことがないですよね。

 それもそのはず、核分裂ではできない核種なので、原発事故では登場しないのです。
 水爆の金属に含まれる亜鉛64(非放射性)に早い中性子が当たると、亜鉛65ができます。半減期は244日で、崩壊して銅65になるときに
γ線を出します

そのγ線のエネルギーは1,116KeV。セシウム137の約2倍です。

 魚の亜鉛濃度は海水中の1万倍。人間にとっても亜鉛は必須ミネラルですが、魚は亜鉛をどんどん取り込みます。

 取り込む臓器は、上の図にあるように、脾臓、腎臓、肝臓などです。

 (図の横軸にあるc/mはcpmと同じです。)

マーシャル共和国・「核の難民」たち

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 ビキニ環礁の近くにはマーシャル共和国の多くの島があります。

 東隣・ロンゲラップ島の住民は、1946年から、米国の核実験の度にラエ島に強制避難させられてきました。

 ところが1954年3月1日の「ブラボー」実験の時は、1週間ほど前に米国軍人がやってきて、「1週間後にいままでの100倍の爆弾のテストをする。米政府からの命令がないので、避難はなし。」と伝えました。

 1980年のブルックヘブン米国立研究所の推定では、住民の外部被ばく線量は1.9シーベルト。甲状腺の(等価)線量は9歳児で20シーベルト、1歳児は50シーベルトに達しています。(「核の海の証言」山下正寿 138-141頁)

 ・1954年3月、ロンゲラップ島民はクエゼリンの基地に隔離され、3ヶ月間「治療」を受けましたが、水で体を洗うだけでした。

 その後、マジェロ環礁エジット島で「定期検査」を受け、その結果が「コナード報告」としてまとめられています。

 ・1957年、米国は除染もしないでロンゲラップ島への帰還を許可しました。
住民によると「アメリカは住んでも大丈夫と言ったが、島でとれるエビを食べると吐いたり、裸足で歩くと足がしびれたりした」そうです。l

 流産・死産、異常児の出産が続くようになり、1985年、ロンゲラップ島民325名が「島を捨て」、クエゼリンへ。


 ・被ばくし、故郷に帰れない「
核の難民」となった島民は、ほとんどが甲状腺摘出手術を受け、がん死が多いということです。

(「核の海の証言」山下正寿 142-146頁、「還らざる楽園」島田興生 215頁 より)

5.13学習会報告その3は工事中です

2017年5月28日 (日)

6.6浪江町線量測定報告会 「測った・見た・聞いた 浪江町の放射能はいま」開催のお知らせ

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https://goo.gl/dJi7tQ より改変

 福島県浪江町の、海に近い「避難指示解除準備区域」(図の水色地域)、「居住制限区域」(黄色地域)は3月31日、避難指示が解除されました。政府は「20mSv帰還政策」を進めています。避難指示が解除された区域の空間線量は、いったいどのくらいなのでしょうか?

私たちは5月に浪江町に行き、空間線量を測定してきました。常磐線「浪江」駅西側、浪江町の繁華街だった川添地域では6mSv/年を超えていました一般公衆の線量限度1mSv/年をはるかに上回り、管理区域(5.2mSv/年)に相当する汚染度です。モニタリングポストは空間線量を低く表示し、住民はほとんど帰還していませんでした。

 私たちが測り、見て、聞いてきた「浪江町の放射能は いま」を報告します。

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2017年5月27日 (土)

福島甲状腺検査に大欠陥!ー4歳児の甲状腺がん、検討委にも報告されずー

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 3月30日、NHK-TVニュース7で事故当時4歳の男児が甲状腺検査を担当する福島県立医大で甲状腺がん手術を受けたのに、県検討委員会にも報告されていなかったことが報道されました。甲状腺検査に大きな欠陥があることが明らかになったのです。

県民健康調査は「判定」のみ

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福島の甲状腺検査は、福島県県民健康調査の一環として行われています。二次検査の結果185名が「悪性ないし悪性疑い」、延べ2523名が「経過観察」と判定されたことが「県検討委員会」に報告され、公表されています。

甲状腺検査は「保険診療」ではなく、あくまでもスクリーニングであり、「悪性ないし悪性疑い」、「経過観察」などと「判定」するのが役割とされています

経過観察は「保険診療」
 「経過観察」と判定された延べ2523名は半年~1年後に病院で診てもらいます。これは健康保険が適用される「保険診療」なので、「県民健康調査」の枠外とされ、経過観察で甲状腺がんと判明しても「県検討委員会」に報告されず、公表もされていないのです。甲状腺検査の大欠陥です

4歳児甲状腺がんを知りながら「5歳以下の発見はないから」放射能影響を否定

昨年3月、「県検討委員会」は「(チェルノブイリと違って)5歳以下からの発見はない」ことを一つの根拠に、福島小児甲状腺がんの放射能影響を否定する「中間取りまとめ」を発表しました。すでに前年、事故時4歳児が福島県立医大で甲状腺がんと診断されていたのに、誰も「5歳児以下からの発見」を指摘しませんでした

4歳児甲状腺がんは氷山の一角
  甲状腺がんの実態が分かるようにすべき

甲状腺検査の大欠陥は、たまたま4歳児が甲状腺がんになったことから明らかになりました。これは氷山の一角です。経過観察されている延べ2523人のうち、一体何人が甲状腺がんになったのでしょう?
「県民健康調査」と別に病院で甲状腺検査を受けて甲状腺がんと診断された場合も、公表されていないのです。まさに大欠陥です

「県民健康調査」は原発事故の影響を調べ、対策を講じるために行われています。甲状腺がんの実態把握と誠実な情報公開が必須です。
県は、「県民健康調査」の枠外で甲状腺がんと判明した人数、甲状腺がんの病状なども個人情報に抵触しない範囲で明らかにし、甲状腺がんの実態が分かるようにすべきです。
そうして初めて、県民健康調査・甲状腺検診制度の趣旨を活かし、県民の信頼を回復することができます。

5月9日、以上の「意見」を内堀雅雄・福島県知事、井出孝利・福島県保健福祉部長、鈴木陽一・福島県保健福祉部県民健康調査課長および福島県県民健康調査検討委員会宛てに送付しました。

«週刊金曜日5月26日号に「間違いだらけの『読売新聞』社説」