2017年6月20日 (火)

水素ガスによるプルトニウム内部被ばく事故;特別報告(山内知也・神戸大教授)

 6月18日の第37回被ばく学習会で、「プルトニウム被ばく事故」について、山内知也・神戸大教授に特別報告していただきました。

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Photo_2 山内知也・神戸大教授

Ecrr2010 山内さんは宇宙線の測定などをされている放射能の専門家で、2011年にECRR(ヨーロッパ放射線防護委員会)の2010年勧告を監訳、出版されています。
 2016年12月、第33回被ばく学習会でお話しいただいています。

 以下は、山内さんの特別報告を温品の責任においてまとめたものです。
「報告者」とは山内さんです。

 肺測定時に体表面に残ったプルトニウム239は、最大3,390Bq
 JAEA(日本原子力研究開発機構)大洗研究開発センター・燃料研究棟で6月6日に起こった事故の後、被ばくした人たちは除染され、肺モニタで測定の結果、事故6時間後の肺から22,000Bqのプルトニウム239が検出された、と発表されました。
 これはプルトニウム239を36万Bq吸入したと推定され、50年間の内部被ばく線量は12Svと計算されました。
 7日に放医研で再測定したところ、肺にはプルトニウム239が検出されず、体表面にプルトニウム239が検出されたことから、「12Sv被ばく」は否定されたかのように報道されています。
 では、22,000Bqは体表面にあったのでしょうか?
 
 上の表左端の「1」 は、貯蔵容器点検作業をした本人です。放医研で体表面を測定したところ、下あごが一番汚染されていて、140cpmだったということです。
 アルファ線は射程が短いので、肺にあるプルトニウム239から出るアルファ線は体表面には届きません。

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 体表面測定に使われたTCS-232Bの受感部面積と計数効率から計算すると、140cpmは、0.20Bq/cm2です。
 
 身長170cm、体重60kgの成人の体表面面積は1.695m2です。
 一番汚染密度の高い0.2Bq/cm2と仮定しても、体表面全体のプルトニウム239は3,390Bq。除染した後、体表面に22,000Bqも残っていたはずはないのです。
 22,000Bqが体表面にあったとすると、体表面の汚染は、1.3Bq/cm2。919cpm程度になったはず。上の表の下あごと右手では20倍も違うので、体表面の汚染の高い所では数千cpmとなり、けたたましく警報音が鳴り響き、絶対に気づきます。

●放医研肺モニタの検出限界は、1940年代より劣る?
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肺モニタ(放医研 2017.6.12発表資料より)
 放医研は肺モニタのプルトニウム239測定下限を5,000Bq~10,000Bqと発表しています(「肺モニタによる測定状況について」)。
 
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 1945年頃の測定値や1980年代までの中国でも数百Bqレベルで測定されているのに、現代の測定下限が5,000~10,000Bqとは、信じられません。
 事故6時間後に肺に22,000Bqで12Svですから、測定下限の5000Bqあっても分からないとすると、2.7Svの内部被ばくがあるかも知れない、ということになります。
 ちなみに、6月13日、被ばくした5人全員が退院しましたが、6月19日、全員の尿からプルトニウムが検出され(検出量は未発表)、再入院しています。

アメリシウム241の量からプルトニウム239の量が分かる
 肺モニタで22,000Bqが検出された人から、アメリシウム241が220Bq検出されています。
 アメリシウム241はプルトニウム241のベータ壊変によって生じます。アルファ壊変してネプツニウム237になりますが、その半減期は432.2年なので、プルトニウム239とアメリシウム241の比は当分変わりません。
 放医研での測定では肺からプルトニウム239は検出されなかったと発表されていますが、アメリシウム241は検出されています。その量は未発表ですが、当然発表すべきです。アメリシウム241の100倍のプルトニウム239が肺内にあったのです。

ポリエチレンにアルファ線が当たって水素ガスが発生!
 プルトニウム239は崩壊するとアルファ線(ヘリウムの原子核)を出すので、ヘリウムガスが発生します。
Photo ポリエチレン容器
 プルトニウムは上の写真のようなポリエチレン容器に入れられ、その外側に二重のビニール袋、一番外側が黄色の金属容器でした。
 ポリエチレン容器の中身がすべて酸化プルトニウムとすると、26年間に発生するヘリウムガスは100cm3。
 
 他方、ポリエチレンなど高分子にアルファ線が当たると水素ガスが発生します。その量は3,900cm3と計算されます。
(注)6月15日、JAEA発表によると、ポリエチレン容器の中身は金属換算でプルトニウム26.9%、ウラン73.1%です。放射能強度は上の計算の約0.3倍になるので、ヘリウムガス 30cm3、水素ガス 1,170cm3となります。
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文責:温品惇一

2017年6月12日 (月)

浪江町避難指示解除区域も6mSv超え。モニタリングポストの線量は半分:6.6報告会

 6月6日夜、文京区・アカデミー茗台・学習室Aで「6.6 浪江町空間線量測定報告会 測った・見た・聞いた」を開催しました。参加者は22名でした。

 当日、準備不足で開始時刻が遅れ、動画再生にも支障を来し、申し訳ありませんでした。

避難指示解除された地域の空間線量、年間6mSv超も
 最初に、「浪江町避難指示解除地域の空間線量」について、温品が報告しました。
 動画はこちら
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 浪江町は今年3月31日、「避難指示解除準備地域(下図水色地域)」と「居住制限地域(同黄色地域)」の避難指示が解除されました。
 浪江町の大部分は山林で、「帰還困難区域(同ピンク色地域)」です。
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  https://goo.gl/dJi7tQ より改変

 避難指示解除された区域の空間線量を堀場製作所の放射線測定器Radiで測定しました。Radiは文科省の「はかるくん」と同等の性能とされています。

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 事故前には人口の多かった常磐線浪江駅西側の川添地区の空間線量は6.2mSv/年。 5.2mSv/年を超え、管理区域相当です。

 一般公衆の線量限度は1mSv/年と「原子炉等規制法」などの法令で決まっています。

 1mSv/年を超える地域の人々が避難できるようにするのが、政府の責任です。

フレコンバッグ置き場の不思議

 続いて瀬川さん(高木学校)からの報告です。
  動画はこちら
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 浪江中学校(
川添地区)近くで突然、16mSv/年(1.88µSv/h)もの高線量が測定されました。ちょっとした高台で、眼下には除染された田んぼの先に、広大なフレコンバッグ置き場が広がっていました。
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 フレコンバッグ置き場に近づくと、意外や意外、空間線量は下がってきます。
 「立入禁止」の表示もないようなので中に入ってみると、1mSv/年程度です。
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 環境省のガイドラインでは、下図のように、まず「汚染されていない土壌」を入れたバッグを並べ、囲われた空間に「除去土壌」を並べます。何段も重ねたあと、上にまた「汚染されていない土壌」を盛り、遮蔽することにしています。
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                            「除染関係ガイドライン 第4編(環境省)」より 

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 フレコンバッグをどんどん積んでいる段階では、横方向への放射線は遮蔽されていますが、斜め上方向~真上方向には遮蔽がありません。遠く離れた高台で、16ミリ/年にも達することになるのです。
測定の後ろから撮った写真と会った人
 3番目の報告は O.ちゑ さんです。
 動画はこちら
 資料はこちら
 人がほとんど帰っていない町、家屋が解体撤去されたことを示す立て札、モニタリングポストの異様に低い値、帰還されたごく少数の方のお話など、紹介していただきました。

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福島の被災農家と農業はどうなるのか
 4人目は小川昌之さんの問題提起です。
 動画はこちら
 資料はこちら

 
肥沃な層を除染ではぎ取られた農地、汚染された水源ダム、農業をあきらめる農民たち・・・。福島の、日本の農業はこれからどうなるのか?
 一緒に考えてみてください。
浪江空間線量測定の動画
 浪江町空間線量測定を終始撮影した映像班が、動画の一部を編集・再生してくれました。
モニタリングポストの線量は異常に低い
 
質問時間の冒頭、モニタリングポストについて、温品から報告しました。
 浪江町を歩きながら空間線量を測定している間に、9つのモニタリングポストを見かけました。その空間線量をRadiの値と比較してみると、とんでもないことが分かりました。

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 上の図にあるように、モニタリングポストには2種類あります。
 上図左のリアルタイム型は地面に直接固定されています。表示される空間線量は、聖テモテ幼稚園のものを除いて、Radiの値の0.74~0.85、平均0.79でした。
 
 他方、上図右側の可搬型は、四隅のコンクリートブロックの上に鉄板を敷き、その上に放射線検出器が置かれ、通常、周囲を金網で囲われています。その表示値は、Radiの値の0.51~0.53,平均0.51でした。
 
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 可搬型モニタリングポストの中に、金網で囲われていないものがあったので、なぜ空間線量が半分に表示されるのか、調べてみました。
 モニタリングポストから少し離れた場所でRadiで測った空間線量を1とすると、モニタリングポストの放射線検出部の位置では、Radiの値は0.76になりました。四隅のコンクリートブロック、測定器の下の鉄板とその下の構造物などにより、測定器の下からの放射線が遮蔽されていると思われます。
 モニタリングポストが表示する空間線量は、Radiの値の半分です。下からの放射線を遮蔽して4分の3になった線量を、さらに3分の2にして表示すると、3/4×2/3=1/2になります。可搬型モニタリングポストは、2段階で半分の空間線量を表示する仕組みになっているようです。
文責:温品惇一

2017年5月30日 (火)

死に至る内部被ばく-5.13第36回被ばく学習会報告・その2

 2017年5月13日の第36回被ばく学習会「内部被ばくはこうして隠された」で、ヒロシマ・ナガサキ、ビキニの内部被ばくの科学的事実について、温品が報告しました。

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 資料はこちら

入市被爆者も、毛がごっそり抜け、紫斑が出て、死亡
 Hida_2 最初に、入市被爆者の内部被ばくについて、ヒロシマで被爆者の治療にあたられた肥田舜太郎さんの証言を、「内部被ばくを生き抜く(鎌仲ひとみ監督)」特典映像で聞きました。
 「ピカに会った(直接被爆した)」人々は、粘膜からの出血、高熱、口の中の腐敗・悪臭、紫斑、ごそっと脱毛など、放射線被爆の急性症状を示して次々に亡くなりました。
 原爆投下時には広島市内におらず、1週間後、1ヶ月後などに市内に入った「入市被爆者」も、同様の急性症状を示し、亡くなっていったそうです。「死の灰」の放射能を体内に取り込んだ内部被ばくによる死亡です。

外部被爆は1mSv未満でも、内部被ばくで急性症状
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 内部被ばくによる急性症状は、広島の於保(おぼ)医師の調査でも裏付けられています。上図の大部分、線で結ばれた点は、爆心地からそれぞれの距離で屋内被爆した方々の、急性症状発症率を示しています。観察した急性症状は、下痢、紫斑、脱毛の3種類です。 
 下痢は爆心地から5キロも離れた地点で被爆した方でも20%に発症しています。ヒロシマの場合、爆心地から3~3.5キロで外部被爆線量1mSvと推定されています。
 上図右端の4点は、入市被爆者の急性症状発症率です。入市被爆者の約37%が下痢になっています。
(学習会で配付・映写した資料ではこの図のタイトルが「入市被爆者の急性症状」となっていました。表示されているデータの大部分は屋内被爆者なので、正しいタイトルは「急性症状の発症率」です。お詫びして訂正いたします。)

放射性微粒子の正体は
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 内部被ばくは放射性微粒子の吸入などによるものでした。
  大滝慈(めぐ)・広島大教授らは、8月6日に入市した陸軍幹部候補生のうち、粉じんを吸い込んだ兵士の発がん率が高いことを明らかにしています。
 「原爆炸裂後の爆心地付近では土埃で太陽光が遮断され暗闇になったとの多数の報告がある」そうです。大滝教授らは、家屋の土壁や、屋根瓦の下に敷かれていた粘土のマンガン、アルミニウムが原爆の中性子で放射化され放射性微粒子となって衝撃波と爆風で舞い上がって飛散したと推定しています。
 放射化されて生じたアルミニウム28の半減期は2.2分、マンガン56の半減期は26時間です。肥田さんの証言に、8月6日の1週間後に入市し、急性症状を呈した女性の話があるので、他の核種も内部被ばくに関与していると思われます。

内部被ばくの線量推定
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 内部被ばの線量はどのくらいだったのでしょうか。
 上の表のように、さまざまな方法で調査され、300mSv~1500mSvと推定されています。

実証されたプルトニウムによる内部被ばく

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 肺などの組織標本のオートラジオグラフィーで乳剤中の飛跡の長さから、アルファ線のエネルギーが分かります。
 長崎大学の七条和子らは、長崎で急性被爆し死亡した症例の肺、腎、骨などの組織標本に、プルトニウム239が存在していることを確認しています。

「死の灰」の怖さを痛感させたビキニ実験
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 ヒロシマ・ナガサキで目立ったのは、熱線と爆風、放射線の急性被爆による被害でした。
 「死の灰」の怖さが初めて痛感されたのは、1954年3月1日のビキニ水爆実験でした。

原爆と水爆
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 原爆が核分裂によるエネルギーを利用しているのに対し、水爆は重水素と三重水素(トリチウム)の核融合によるエネルギーを利用しています。
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ビキニ「ブラボー」実験
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ビキニ「ブラボー」水爆実験の動画はこちら

 1954年3月1日、マーシャル共和国ビキニ環礁で行われた水爆実験は「ブラボー」実験と呼ばれました。米軍の計画では爆発力は6メガトンでしたが、実際は15メガトンでした。その結果、第五福竜丸が被爆する羽目に陥ったのです。
悪魔の光(「ビキニ事件の表と裏」大石又七著 より)
 (午前4時頃)「サア-」と夕焼け色が空いっぱいに流れた。
 驚いて外に飛び出すと、右の地平線から左の地平線まで、空も海も船もその色にそまっている。そして、その色が消えないのだ。
 2、3分してその光は消えた。
 (7,8分後)大音響が海底から突き上げてきた。「ドドドドドー、ゴー」海面を伝わってくる爆発音ではない、地鳴りだ。足元を震わすごう音が、海全体を包み込んで下から突き上げてきたのだ。
 12、3分が過ぎたと思う。空は明るくなり、光が出ていた西の水平線を見ると、そこには入道雲を5つ、6つ重ねたような巨大なキノコ雲が空を突いていた。

死の灰(「ビキニ事件の表と裏」大石又七著 より)

 2時間ほどが過ぎただろうか、白い物が空からぱらぱらと降り始めた。
 ちょうどみぞれが降ってきたという感じだった。
 やがて風を伴い、雨も少し交じってたくさん吹き付けてきた。
 みんな目を真っ赤にして、こすりながら作業をした。水中眼鏡をかけている者もいた。鉢巻きをした者は頭の上に白く積もらせ、デッキの上には足跡がついた。
 唇につくものを舐めてみると、溶けないで砂を舐めているようにジャリジャリして固い。
 白い灰はとぎれることなく降り続いた。
 6時間ほどかかってようやく縄(はえ縄)を揚げ終えた。灰も最後まで降り続いていた。
 体やデッキに積もった灰を海水で洗い流し、隠れるように船室にもぐり込んだ。

被ばくした船員たち

 ・3月1日、「白い粉」を全身に浴びながら作業

 ・灰を浴びた全乗組員(23名)は人によって多少の差はあったが、いずれもその日の夕方から身体に異常を覚え始めた。しかも乗組員はそれより焼津に帰港するまでの約2週間、船内にあって体外より強い放射線の照射を受け、皮膚表面に放射性物質が附着し、さらに飲食呼吸によって体内にまで放射性物質が侵入したのであった。
・その結果、皮膚には主としてβ線によるやけどや脱毛を起こし、骨髄その他は体外よりのγ線や体内に沈着した放射性物質の放射線による障害を受け、かくして全員が不幸にも『放射能症』にかかったのであった。
 (『ビキニの灰の分析メモ」木村健一郎 より)

・3月14日、焼津港に入港。焼津共立病院で「原爆症」と診断されました。

・第五福竜丸の甲板から、強い放射能を検出

・乗組員の体から、放射能測定器の針が振り切れるほどの反応

白血球の減少

 3月⒖日、皮膚症状、白血球減少のひどい船員二人が東大病院に移送され、「放射能症」と診断されました。
 その後も白血球減少が続き、3月28日には全員が東京の病院に転院しました。(以上、「ビキニ水爆被災事件の真相」安斎育郎・監修)

 「だるさがひどく、白血球の数も3千、2セント下がり始め、体に力が入らなくなってきた。千を割って、百大になった者もいた。」(「死の灰を背負って」大石又七)。

久保山さんの死
 
久保山愛吉さんは白血球減少症で輸血を繰り返していましたが、6月ごろから黄だんの症状を示し、9月23日、亡くなりました。40歳でした。
 各臓器の放射能を調べた結果、骨に集まるとされている
ストロンチウムが、肝臓にも集まっていたことが明らかになりました。
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 上の表にセシウムが出てこないのは、放射能測定用の試料を作る過程の灰化で消失した可能性があるということです。

乗組員の死亡相次ぐ
 1975年には二人目の船員が肝硬変で死亡。47歳の若さでした。
 その後も乗組員の「早すぎる死」が続き、2013年10月現在、乗組員23人中16人が亡くなっていたそうです。
 肝硬変、肝臓がんがおおく、輸血で感染したウイルス性肝炎が原因とされています。
被ばく線量の推定
 
第五福竜丸の入港後、船体各部の線量減衰状況と、各人の居た場所の聞き取りから、外部被ばく線量は1.6~7シーベルトと推定されました。

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 被ばくしたマグロ漁船・貨物船乗組員で今まで生き残った人の染色体異常率からは、平均91mSv、最大 295mSvと推定されています。 

 (「元船員らの被ばくを追う」より)

死の灰の放射能

 死の灰は直径0.1ミリ程度。サンゴ礁のかけらでした。

 その放射能は1.4キュリー/グラムで、1キログラム当たり50兆ベクレルを超えるほど強力なものでした3月1日午前7時換算)

 その放射能からウラン237が検出され、この時の核実験が原爆ではないことが明らかになりました。
 「燃えないウラン238」に水爆の早い中性子が当たると、
ウラン237とつの2中性子ができます。ウラン237は他のウラン同位体と違ってβ線を出すので、ガイガーカウンターでも検出できました。半減期は6.7日です。

ガイガーカウンターで分かるほど、魚が汚染されていた

 3月14日、焼津の魚市場でマグロなど9.4トンが競売にかけられ、東京、大阪、神戸などへ出荷されました。

 3月17日、第五福竜丸や魚市場に残っていたマグロをガイガーカウンターで測定すると2,000cpm(1分当たりのカウント)。バックグラウンドは20cpmでしたから、その100倍です。
 現在のバックグラウンドは約0.04μSv/hですから、マグロに測定器を向けたら4μSv/hだった、ということです。

 3月30日、厚生省が決めた検査基準は、人体は500cpm以上の場合、精密検査。 2,000cpm以上の船体は「専門家の意見を聞き、処分」。10センチ離れて100cpm以上の漁獲物は、汚染物として廃棄処理する、というものでした。

 全国18漁港で廃棄魚類492トン、魚を廃棄した船856隻に及びました。

俊鶻丸の派遣

 1954年4月、農林省水産庁が海洋調査を決定しました。米国に補償を迫るためデータを集めることが目的でした。
 研究者を乗せた調査船・俊鶻丸(しゅんこつまる)は5月15日に出航し、5月30日、31日、ビキニ環礁の1000キロ東の海水から、毎分146cpm、450cpmを検出しました。これは「想定外」の大発見でした。
 水爆実験で飛散した膨大な放射能も、太平洋の海水で薄められるとの予想の下、ストローズ・米原子力委員長は「実験場のごく近くをのぞいては、ビキニ海域の海水には放射能はない」と言っていたのです。
 実際は、海の表面から50~100メートルまでは暖かく比重の小さい海水で、下の海水とは混じり合いにくいのです。

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 そのため、ビキニ環礁周辺では、上の図に見られるように、経度で20度にもわたる広範囲の海水が11Bq/Lを超える汚染を示していました。
 ちなみに、海水の放射能は通常、せいぜい1ミリベクレル/L程度です。

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汚染魚に最多の放射性核種は亜鉛65

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 亜鉛65なんて、聞いたことがないですよね。

 それもそのはず、核分裂ではできない核種なので、原発事故では登場しないのです。
 水爆の金属に含まれる亜鉛64(非放射性)に早い中性子が当たると、亜鉛65ができます。半減期は244日で、崩壊して銅65になるときに
γ線を出します

そのγ線のエネルギーは1,116KeV。セシウム137の約2倍です。

 魚の亜鉛濃度は海水中の1万倍。人間にとっても亜鉛は必須ミネラルですが、魚は亜鉛をどんどん取り込みます。

 取り込む臓器は、上の図にあるように、脾臓、腎臓、肝臓などです。

 (図の横軸にあるc/mはcpmと同じです。)

マーシャル共和国・「核の難民」たち

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 ビキニ環礁の近くにはマーシャル共和国の多くの島があります。

 東隣・ロンゲラップ島の住民は、1946年から、米国の核実験の度にラエ島に強制避難させられてきました。

 ところが1954年3月1日の「ブラボー」実験の時は、1週間ほど前に米国軍人がやってきて、「1週間後にいままでの100倍の爆弾のテストをする。米政府からの命令がないので、避難はなし。」と伝えました。

 1980年のブルックヘブン米国立研究所の推定では、住民の外部被ばく線量は1.9シーベルト。甲状腺の(等価)線量は9歳児で20シーベルト、1歳児は50シーベルトに達しています。(「核の海の証言」山下正寿 138-141頁)

 ・1954年3月、ロンゲラップ島民はクエゼリンの基地に隔離され、3ヶ月間「治療」を受けましたが、水で体を洗うだけでした。

 その後、マジェロ環礁エジット島で「定期検査」を受け、その結果が「コナード報告」としてまとめられています。

 ・1957年、米国は除染もしないでロンゲラップ島への帰還を許可しました。
住民によると「アメリカは住んでも大丈夫と言ったが、島でとれるエビを食べると吐いたり、裸足で歩くと足がしびれたりした」そうです。l

 流産・死産、異常児の出産が続くようになり、1985年、ロンゲラップ島民325名が「島を捨て」、クエゼリンへ。


 ・被ばくし、故郷に帰れない「
核の難民」となった島民は、ほとんどが甲状腺摘出手術を受け、がん死が多いということです。

(「核の海の証言」山下正寿 142-146頁、「還らざる楽園」島田興生 215頁 より)

5.13学習会報告その3は工事中です

2017年5月28日 (日)

6.6浪江町線量測定報告会 「測った・見た・聞いた 浪江町の放射能はいま」開催のお知らせ

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https://goo.gl/dJi7tQ より改変

 福島県浪江町の、海に近い「避難指示解除準備区域」(図の水色地域)、「居住制限区域」(黄色地域)は3月31日、避難指示が解除されました。政府は「20mSv帰還政策」を進めています。避難指示が解除された区域の空間線量は、いったいどのくらいなのでしょうか?

私たちは5月に浪江町に行き、空間線量を測定してきました。常磐線「浪江」駅西側、浪江町の繁華街だった川添地域では6mSv/年を超えていました一般公衆の線量限度1mSv/年をはるかに上回り、管理区域(5.2mSv/年)に相当する汚染度です。モニタリングポストは空間線量を低く表示し、住民はほとんど帰還していませんでした。

 私たちが測り、見て、聞いてきた「浪江町の放射能は いま」を報告します。

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2017年5月27日 (土)

福島甲状腺検査に大欠陥!ー4歳児の甲状腺がん、検討委にも報告されずー

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 3月30日、NHK-TVニュース7で事故当時4歳の男児が甲状腺検査を担当する福島県立医大で甲状腺がん手術を受けたのに、県検討委員会にも報告されていなかったことが報道されました。甲状腺検査に大きな欠陥があることが明らかになったのです。

県民健康調査は「判定」のみ

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福島の甲状腺検査は、福島県県民健康調査の一環として行われています。二次検査の結果185名が「悪性ないし悪性疑い」、延べ2523名が「経過観察」と判定されたことが「県検討委員会」に報告され、公表されています。

甲状腺検査は「保険診療」ではなく、あくまでもスクリーニングであり、「悪性ないし悪性疑い」、「経過観察」などと「判定」するのが役割とされています

経過観察は「保険診療」
 「経過観察」と判定された延べ2523名は半年~1年後に病院で診てもらいます。これは健康保険が適用される「保険診療」なので、「県民健康調査」の枠外とされ、経過観察で甲状腺がんと判明しても「県検討委員会」に報告されず、公表もされていないのです。甲状腺検査の大欠陥です

4歳児甲状腺がんを知りながら「5歳以下の発見はないから」放射能影響を否定

昨年3月、「県検討委員会」は「(チェルノブイリと違って)5歳以下からの発見はない」ことを一つの根拠に、福島小児甲状腺がんの放射能影響を否定する「中間取りまとめ」を発表しました。すでに前年、事故時4歳児が福島県立医大で甲状腺がんと診断されていたのに、誰も「5歳児以下からの発見」を指摘しませんでした

4歳児甲状腺がんは氷山の一角
  甲状腺がんの実態が分かるようにすべき

甲状腺検査の大欠陥は、たまたま4歳児が甲状腺がんになったことから明らかになりました。これは氷山の一角です。経過観察されている延べ2523人のうち、一体何人が甲状腺がんになったのでしょう?
「県民健康調査」と別に病院で甲状腺検査を受けて甲状腺がんと診断された場合も、公表されていないのです。まさに大欠陥です

「県民健康調査」は原発事故の影響を調べ、対策を講じるために行われています。甲状腺がんの実態把握と誠実な情報公開が必須です。
県は、「県民健康調査」の枠外で甲状腺がんと判明した人数、甲状腺がんの病状なども個人情報に抵触しない範囲で明らかにし、甲状腺がんの実態が分かるようにすべきです。
そうして初めて、県民健康調査・甲状腺検診制度の趣旨を活かし、県民の信頼を回復することができます。

5月9日、以上の「意見」を内堀雅雄・福島県知事、井出孝利・福島県保健福祉部長、鈴木陽一・福島県保健福祉部県民健康調査課長および福島県県民健康調査検討委員会宛てに送付しました。

週刊金曜日5月26日号に「間違いだらけの『読売新聞』社説」

1137_2 Photo 526_2_2 「週刊金曜日」2017年5月26日号に「放射線防護基準の緩和求め、科学的根拠に乏しい論を次々と展開 間違いだらけの『読売新聞』社説」という、まさのあつこさん(ジャーナリスト)の記事が掲載されています。
 まさのさんが問題にしている読売新聞社説は、私たちが公開質問状を提出している、「放射線審議会は民主党政権時の基準を見直せ」と題する2月9日の社説です。まさのさんはこの社説について、3点の問題点を指摘しています。
指摘された3点の問題点
 第1に、読売新聞社説は「飲料水中のセシウム量の基準は米国が1,200Bq/kg、欧州が1,000Bq/kgなのに、日本は10Bq/kg」と主張しています。まさのさんは、厚労省医薬食品局食品安全部基準審査課に取材し、読売新聞社説の誤りを明らかにしています。
 第2に、「100mSv以下の被曝による健康への影響はない」論について、津田敏秀・岡山大教授のコメントを引用し批判しています。
 第3に、「1mSvの呪縛」と称して線量限度1mSv/年を否定し、20mSvを強要しようとする社説を批判しています。
「質問状への回答いまだなし」
 まさのさんは、私たち放射線被ばくを学習する会が、481名もの賛同の下、フェイク社説の撤回を求める公開質問状を読売新聞社に提出していることに触れています。まさのさん自身も読売新聞社に取材を申し込んだが、なしのつぶてだという。
論拠を答えられない読売新聞社説
 間違った主張を展開しながら、質問に答えることもできない読売新聞に対し、まさのさんは「販売部数日本一を誇る紙メディアの矜持はどこにあるのか」と厳しい問いを投げかけています。
賛同人を募集しています
 5月27日現在、読売新聞社への公開質問状 への賛同人は524人に達しています。引き続き賛同人を募集しています。賛同していただける方は、右の放射線被ばくを学習する会にメールをクリックし、賛同人申込と明記の上、お名前、都道府県と市町村名、あるいは肩書き・所属を記入し、送信してください。

 ある程度の人数がまとまる度に、読売新聞社に送付します。

2017年5月20日 (土)

山林火災の浪江町でセシウムが飛散!~5.13第36回被ばく学習会報告・その1

 2017年5月13日(土)午後、第36回被ばく学習会『内部被ばくは こうして隠された」を57名の参加で開催しました。

 その内容を3回に分けてご報告します。
 今回は、高橋博子さんの講演に先だって、福島県浪江町の山林火災に関する報告に学習会後のデータを含めてご紹介します。

 学習会動画、最初からはこちら

  山林火災関係の動画はこちら

  資料はこちら

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 4月29日に山林火災が発見された十万山は、双葉町との境の近くです。
 帰還困難区域で、空間線量の高い場所です。

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セシウムが飛散

 福島県は5月1日から、昼前後の1.5~3時間程度、火災現場の2.5~4.3キロ地点3ヶ所(下図)で、空気中の浮遊じんの放射能測定を始めました(5月1日は2ヶ所)

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 浮遊じんの測定は、ポンプで空気を吸引し、ろ紙に捕集した浮遊じんのセシウム134、137を測定しています。
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 5月8日、11日、12日、16日、17日には、石熊公民館、やすらぎ荘で明らかにセシウム137が飛散しています。ただし、その量は最大で空気1立方メートル当たり25ミリベクレル程度です。ミリベクレルはベクレルの1,000分の1です。

空間線量への影響は?

26 左のグラフは、2011年3月15日、午前6時から9時まで、茨城県東海村のJAEA・核燃料サイクル工学研究所で測定された空間線量です。午前8時頃、放射性ヨウ素などを含むプルームが通過していきました。
 午前6じから9時7分まで、空気中の放射性物質(ガス状+粒子状)を捕集し測定した結果、

 ヨウ素131          1,600 Bq/立方メートル
 テクネチウム132 1,300
Bq/立方メートル
 セシウム134     180
  Bq/立方メートル
 
セシウム137     190  Bq/立方メートル
が検出されています。
JAEA-Review 2011-035  https://goo.gl/ykw3Kq

  大雑把に見ると、3,000 Bq/立方メートルで空間線量が平均2μSv/h程度、上昇したことになります。1 Bq/立方メートルで空間線量が0.0067μSv/h上昇する計算です。

 他方、今回の山林火災に関連して観測されたのは10ミリベクレルのレベルなので、空間線量に影響を及ぼす程ではないと思われます。

山火事で飛散したセシウムなのか?

 グラフ1で見られたセシウム浮遊じんは、山林火災によって生じたものなのでしょうか?

 観測地点の風向・風速が分からないので、セシウム浮遊じんが火災現場から飛散したのかどうか、わかりません。
 山林火災は4月29日に発生し、5月10日に鎮火したと発表されています。
 検出された浮遊じんのセシウム137は、火災期間中よりも鎮火後の方が多くなっています。
 
火災以前にどの程度のセシウム浮遊じんがあったのかも分かりません。

 現在のデータからは、セシウムが飛散していたことは確かですが、山林火災の影響がどの程度だったのかは不明です。

 文責:温品惇一

2017年5月15日 (月)

6.18被ばく学習会「核との泥沼の戦い・撤退も放棄もできない『廃止措置三兄弟』~福島第一・もんじゅ・東海再処理施設~」のお知らせ

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 チラシPDFはこちら
 
 原子力規制委員会は、現在、福島第一原発、もんじゅ、東海再処理施設について、安全・確実な廃止措置の実行を求めています。
 福島第一原発事故は世界最大級の核災害であり、「もんじゅ」は水に触れると爆発する金属ナトリウムを冷却剤に使用し、東海再処理施設では今後12年間にわたって、約400京ベクレルの高レベル放射性廃液をガラス固化体にしていかなければなりません。
 これらの施設の潜在的リスクの高さや、マネジメントのレベルの低さに危機感を抱き、規制委員会をはじめとする公開情報をウォッチしてこられた春橋哲史さんに、「廃止措置三兄弟」の課題・今後の方向性についてお話しいただきます。
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2017年5月 4日 (木)

20mSv法制化に向けた放射線審議会の権限強化法、実質審議なしに成立!

 放射線審議会の権限を強化し、ICRP2007年勧告を日本の法律に取り込もうとする法案4月14日に成立しましたが、衆参両院とも、実質的な審議は一切ありませんでした。

 国会に上程されたのは「原子力利用における安全対策強化のため」、原子力関係の3法律(原子炉等規制法、放射性同位元素規制法、技術的基準法)を一括して改正する法案でした。放射線審議会の権限強化は「技術的基準法」改正案に含まれます。

 改正法案前提については、FoE Japan主催の勉強会規制庁交渉、まさのあつこさんの記事(週刊「SPA!」2017年4月25日号 入手困難な方はanti-hibaku@ab.auone-net.jp までご連絡ください)を参照してください。
 
衆議院では、アイソトープ協会理事が歓迎
 衆議院に上程されたのが2月7日。

 3月14日の環境委員会では、片山 啓・規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官が、ICRP2007年勧告と目の水晶体の線量限度引き下げを取り入れるため、放射線審議会の機能強化が必要と説明、質問した福田 昭議員(民進党)は「もっともな理由だ」と応じました。
 討議は改正案のうち、原発の検査制度などを変更する「原子炉等規制法」改正関係に集中し、3月17日に参考人を呼んで審議することとなりました。

 3月17日は、関村直人・東大教授、二ッ川章二・アイソトープ協会理事、伴 英之・原子力資料情報室共同代表、元原発技術者の小倉志郎氏がそれぞれ意見陳述し、質問に答えました。
Photo_3 二ッ川氏はアイソトープの取扱いや廃棄物処分の規制が緩められることを期待して、放射線審議会の権限強化に賛成意見を述べています。
 衆議院環境委員会の審議は3月17日だけで、午後には起立多数で可決、23日に衆議院本会議で可決され、参議院に送られました。

参議院では、田中規制委員長が国際基準を強調
 参議院環境委員会では3月30日に趣旨説明、4月6日に審議されました。
 公明党の若松謙維議員が「福島の風評被害」を嘆いたのに対し田中俊一・原子力規制委員長は
Photo 「ベースにあるのは、放射線とか放射能に対する恐れですね。・・・きちっと正しい知識を持って理解していただくこと、・・・規制基準というのをきちっと国際的なスタンダードにするということかと思います。
 残念ながら、我が国は各省庁いろんな立場で規制が行われていまして、それの間に整合性がないというようなところがありますので、そういったことを含めてきちっと納得できるようなものをつくり上げていくと。その中で、やはり風評被害というのは、 これはなかなか一言ではいかなくて時間の掛かることですけれども、 きちっとやはり国民全体の世論として、 気持ちとして取り組んでいただくことも大事かというふうに思っております」
と答弁。「風評被害」防止のために放射能基準をゆるめようとしているように聞こえます。

 参議院環境委員会は午後半日の審議で可決、翌7日の参議院本会議で賛成212票、反対22票で可決・成立しました。反対したのは、日本共産党、希望の会(自由・社民)、沖縄の風でした
 改正法は4月14日に公布され、放射線審議会の権限強化は即日施行されました。

2007年勧告の取り入れは?
 ICRP2007年勧告取り入れの見通り氏について、ご質問をいただきました

 お答えするのは困難ですが、1990年勧告を国内法制に取り入れるときは、1991年2月に放射線審議会の検討が開始され、7年後にようやく改正に向けた諮問がまとめられました。実際に法改正されたのは2001年のようです。

 2007年勧告については、2008年1月に放射線審議会の検討が開始され、2010年に中間報告、2011年1月に第2次中間報告が出されていますが、20mSv導入については、まったく検討されていませんでした。日本で過酷事故が起こることは、想定外だったのでしょう。2011年3月の福島原発事故により、2007年勧告導入の検討はストップしていました。

Photo_2  現在の放射線審議会は神谷研二会長ら8人の委員が任命されていますが、2007年勧告取り入れに積極的には見えません。次回の放射線審議会までに、積極的な委員を任命し、検討が開始されるものと思われます。
 その行方がどうなるのかは、私たち次第ではないでしょうか。
文責:温品惇一

2017年4月13日 (木)

「白血病は原発のせいじゃない?!」4.2学習会報告(その3:吉田由布子さん、問題提起)

3人目の講師は吉田由布子さん(「チェルノブイリ調査・救援」女性ネットワーク)。

原爆症の認定基準についてお話しいただきました。

 配付資料はこちら 
 スライド資料はこちら
 動画はこちら
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被爆者援護の制度(スライド資料2頁)

 配付資料1頁の年表にあるように、12年間は被爆者に何の援護もなかったのです。1957年に原爆医療法ができ、徐々に支援策が追加されました。被爆者、支援者、世論、裁判などの中で勝ち取られてきたのです。

 1995年に(現在の)被爆者援護法ができましたが、その前文には「被爆者が受けた放射能による健康被害という、他の戦争犠牲者には見られない『特別の犠牲』に着目し、国の責任において、医療の給付、各種手当の支給等、総合的な保健・医療・福祉施策を講じている」と書かれている。

 被爆者健康手帳を持っている方は、健康診断が行われ、希望すればがん検診もできる。医療保険の自己負担分はほぼ国費で補填される。一定の要件をもって、健康管理手当が支払われる。一定の疾病にかかっている人ですが、原爆の影響によるものでないことが明らかな場合には、不支給。

 今日、話題になっているのは医療特別手当。いわゆる原爆症という、「放射線との因果関係がある」と認定されるかどうかが原爆症の認定基準にかかわってくる。

健康診断と疫学調査(スライド資料3頁)

S_20170402yoshidaslide3  被爆者健康手帳を持っている方は2012年の段階で約20.2万人ぐらい。その中から放射線影響研究所の中で検査(寿命調査 LSS)を受けている方が12万人、さらにそのうち約2万人が成人健康調査(AHS)を受けている。被爆者健康手帳の他に、健康診断受診者証など、あとから制度を広げることも行われている。

 死因やがんの疫学調査は、手帳を持っている人全体ではなく、12万人のコホートについて行われている。

原因確率の導入(スライド資料4、参考資料)

 2001年に厚労省が原爆症の認定基準に「原因確率」を取り入れた。甲斐倫明氏の資料によると、「原因確率」は、

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で計算され、疾病、被ばく時年齢、被ばく線量により異なる。

認定にあたって、厚労省は、

1)原因確率が概ね50%以上:原爆放射線の影響の可能性があることを推定⇒認定

2)概ね10%未満:可能性が低いものと推定⇒認定却下

3)10%以上50%未満:個別判断

と定めた。

「原因確率」の実態(スライド資料5)

S_20170402yoshidaslide5  これは男性胃がんの原因確率の表ですが、50%を超えるのは6歳までの子が1000センチグレイ(=10Sv)以上被曝したときだけ。そうすると10グレイ浴びても生き残って胃がんになれば間違いなく認定されます、というとんでもない話で、みんな死んでしまう。

 1.4キロ以遠だと子どもでも10%以下なので、原因確率をあてはめると、認定されるのは非常にむつかしい。

審査方針の見直しへ(スライド資料6)

 原因確率の考え方に対する批判が高まり、認定却下された人たちの集団訴訟で国の敗訴が続いたことから、「原爆症認定審査の在り方に関する検討会」で審査方針の見直しを論議することとなった。

検討会と与党プロジェクトチーム(スライド資料7)

 ほぼ放射線の専門家が委員となって検討会が開かれた。これと平行して、当時の第1次安倍内閣の与党だった自民党・公明党のプロジェクトチームも、認定基準見直しの検討を開始しました。

与党プロジェクトチームの考え方(スライド資料8)

 与党の考え方は、「これまで厚生労働省が行ってきた認定行政に対し幾多の裁判例、世論より厳しい批判が出された、と。現実的救済につながっていない今の「原因確率論」を改めるべきだ、と。現実的救済措置を実現するために、次のように提案したい、と。」

二つの見直し案(スライド資料9)

 ここで二つの案が出たんですが、専門家が中心の検討会の方は、「原因確率を放射線影響の判断の目安として使うことは合理性があり、適切に用いるべきである」。

 一方、自民・公明のプロジェクトチームは、「がん、白血病などの典型症例において、爆心地から一定区域(約3.5 キロメートル前後を目安)以内で被爆した者等については、積極的かつ迅速に認定を行うこと、それ以外の被爆者についても総合的に個別審査を行うこと」を提言しました。

 両方とも、2007年の12月に出されたが、「検討会」の報告は従来の認定制度の考え方を踏襲したもので、被爆者団体から大きな抗議・批判があがった。政府は、その時は福田内閣だったんですが、与党プロジェクトチームの提言をほぼ受け入れる形で認定審査の新方針を決定しました。

2008年の見直し(スライド資料10)

 2008年3月から、「放射能の影響による」と積極的に認定する範囲を「被爆地点が爆心地から約3.5キロ以内である者、原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者、原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下より約2週間以内の期間に、爆心地から約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した者」は積極的に認定しましょう。

 対象疾病としては、悪性腫瘍や白血病など、格段に反対すべき事由がない限り、申請疾病と被ばくした放射線との関係を積極的に認定する、という形に変わった。

距離と被ばく線量(スライド資料11) S_20170402yoshidaslide11 3.5キロなんですが、これは距離と被爆に関する厚労省の見解です。配付資料の2~3頁に大きい図を載せています。下の方に、わざわざ「一般公衆の線量限界:放射線従事者でない一般人が許容できるとされる被曝量(年間)」と書いている。その一般公衆の線量限界は1.0ミリシーベルトで、それに大体相当するのが、ヒロシマの場合は3.25キロであると書き、ナガサキの場合は3.55キロであると説明しています。

 実際には距離からだけでは個人の被曝量は推定できないわけで、よく批判があるように、内部被ばくがほとんど無視されている、ということもあります。初めに線量ありき、なので、その人がどういう症状があったかというのは、どちらかというと見ない。何か症状があっても、こんな線量だから放射線のせいとは考えられない、というところから始まってしまうので、自分たちが考える線量と放射線影響という見方では、なかなか因果関係が認められない。

 この距離で1ミリシーベルトだよ、というのは、国がそういう推定をしている。それが正しいかどうかは別だが、国としてはそういう推定をした。それで3.5キロが導き出されている。

(スライド資料12)

S_20170402yoshidaslide12  2002年に出された被曝量の評価DS02で見ると、4キロの地点になると、ヒロシマでは0.05mSv、ナガサキでは約0.2mSvとなっている。しかし被曝地域とされた地域は、3.5キロの中だけとか2キロの中だけということはなくて、もっと広い範囲なので、そこにいて被ばくした人は申請して被爆者健康手帳をもらえるという権利は持っている。

波及への懸念(スライド資料13)

 この審査方針が出たときに、これが他の被ばくによる健康問題に影響を及ぼすと困ると思った委員がいた。この方針案を審議して了承したんですが、原子爆弾被爆者医療分科会議事要旨(2008年2月25日)に、誰とは書いてないんですが、「この認定の方針は、つまり放射線との因果関係を積極的に認めるというのは、『原爆被爆者に限定する』ということですよね。他の戦争犠牲者との公平性も考えないといけない。これは様々な分野において放射線に被曝し、疾患が起こる可能性や、放射線診療による医療被曝の結果で、2次がんが発生するといった可能性もあるけれども、原爆症認定の審査方針がそのような他の分野に影響を及ぼすことが非常に懸念される」ことが委員から述べられたと書かれている。

 それは労災ということもありますし、福島原発事故の後の一般の私たち、被曝や健康にどういう対策を取るかということに非常に影響を及ぼしてきたと思います。

認定却下が続く(スライド資料14)

20170402yoshidaslide14

 基準は改められたんですが、その後も却下が非常に多い。

(スライド資料15)

 被爆状況や疾病別の認定状況で、上が認定件数、下が却下件数なんですが、例えば3.5キロ以内の直接被爆でも非常に多くの人たちが却下されている。

(スライド資料16)

20170402yoshidaslide16  申請疾病別の却下理由としては、「放射線起因性が認められない」とか、「要医療性」も要件になっているので、「いま医療にかからなくても大丈夫だから」みたいな理由もある。新しい基準ができて、もっと認定されるであろうと思ったが、そんな風にはいかなかった。

再度の見直し結果(スライド資料17)

 そこで、認定制度の在り方を再度見直すことになりました。この見直しが2010年から始まったが、3回目が2011年3月17日に会議が入ってましたが、中止になった。その後再開されました。今度は委員の中に放射線の専門家だけじゃなくて、行政や被爆者団体の代表も入っているが、2013年12月に検討会の報告書がまとまりまして、非がん疾患、がんではない疾患の認定基準見直しが行われました。

 心筋梗塞など「非がん」の3疾病から「放射線起因性が認められる」という条件は削除されたが、一方、爆心地から被爆地点までの距離の条件は、現行の「約3.5km以内」から「約2km以内」に狭まってしまった。白内障は加齢によるものと区別するために「約1.5km以内」とより厳格化されてしまった。逆行状態になってしまった。

被団協の抗議(スライド資料18)

 これについて被団協は同日、抗議声明を発表しました。「この検討会が本来法律の改正を伴う認定制度の抜本的な改善を目的としていたにもかかわらず、その課題を認定基準問題に矮小化し、司法判断と行政認定の乖離を解決しないまま、現状をより後退させる点に根本的な問題がある」という抗議声明を発表しました。

放射能影響判断の基準(スライド資料19)

 私も先ほど言いましたが、ある疾病が放射線被ばくの影響によると考える、あるいはそれを補償する際の基準となる被ばく線量について、原爆被爆の場合には、一応3.5キロの地点で、国は大体1mSvに当たると決めた。ところが同じ放射線被曝でありながら、労災についてもそうですし、福島以降の被ばくについて、どのような保健対策が行われるかというときに、福島県内の県民健康調査のみにお金が出ているだけで、ほかの県には出ませんし、年間20mSvで帰還を強制するような形になっている。福島原発事故以前も、他の問題に波及したらどうするんだというようなのがあったんですが、福島原発事故以降、顕著になって、複雑化しているな、と思います。

放射能影響を否定しきれない病気(配付資料の最後の頁)

 原爆被爆者とチェルノブイリ・ウクライナの、被ばく関連対象疾病比較表を載せました。健康管理手当の対象疾病なんですが、健康管理手当というのはどういう定義かというと、これも厚労省の定義ですが、「放射線の影響を完全に否定しきれない疾病にかかっているため、日常、十分に治療を行う必要があり、そのために必要な費用に充てる」という趣旨になっている。

 その病気として、少しずつ増えてきたが、造血機能障害を伴う疾病、再生不良性貧血や鉄欠乏性貧血など。肝機能障害を伴う疾病、細胞増殖機能障害を伴う疾病(悪性新生物など)、内分泌腺機能障害を伴う疾病(糖尿病、甲状腺機能低下症など)、脳血管障害を伴う疾病(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞など)、循環器機能障害を伴う疾病(高血圧性心疾患など)、腎臓機能障害を伴う疾病(慢性腎炎など)、水晶体混濁による視機能障害を伴う疾病(白内障)、呼吸器機能障害を伴う疾病(肺気腫など)、運動器機能障害を伴う疾病(変形性関節症など)、潰瘍による消化器機能障害を伴う疾病(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)。

 これらは、放射線の影響を完全に否定しきれない病気にかかっていて、そのために日常、健康上の治療を行う必要があるという趣旨で、健康管理手当が支給される。放射線の影響によらないことが明らかな場合には、手当は支給しないが、そうでない限り支給される。

 右にチェルノブイリの事故による、放射線や他の要因により被災した成人住民に生じる可能性のある疾病リスト。成人とこどもと、両方リストありまして、これはOurPlanetTVの白石さんがウクライナで入手された物ですが、ほぼ、原爆被爆者の疾病と同じ。血液と造血器官の疾病、慢性肝炎、悪性新生物、甲状腺の疾患、脳関連の疾患、循環器系の疾患、白内障や呼吸器疾患、消化器疾患。ちょっと変わっているところもありますが、原爆の方になくてチェルノブイリの方にあるのは、脳の器質的損傷による精神障害、神経系と感覚器の疾病等々。

 子どもさんのはもう一つ別にある。

 さまざまな病気を「放射線との関連を否定しきれない」と言いながら、原爆症認定、労災、福島原発事故以降の住民の健康等々については、自分たちで作った、放射線を浴びた人たちへの特別の法律が、まったく活かされていない、というのが現実だと思います。ダブルスタンダード、トリプルスタンダートになっています。活用できるものは活用していくべきではないかと思います。以上です。

放射線起因性に関する問題提起(温品惇一)

 吉田さんへの質疑の最後に、被ばくによる健康影響評価について、温品から以下の問題提起をしました。

 資料はこちら(9頁~ )

 動画はこちら

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http://csrp.jp/csrp2016/images/portfolio/slide/LEURAUD-J.pdf
注:CLLは慢性リンパ性白血病 RBMは赤色骨髄 

 例えば白血病の場合、原発労働者の国際調査(INWORKSでは、1Gy(=1㏜)被ばくすると白血病死亡率が3倍増えると報告されています。

 20mSv被ばくすると、追加被ばくゼロ(=自然発生)の場合の白血病死亡率の6%増える、という計算になります。

 話を簡単にするために、自然発生の白血病死亡率を1万人当たり100人と仮定します。

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 被ばくしていない人1万人を調べると、100人が白血病で死亡するという仮定ですが、20mSvずつ被ばくした人1万人では、6%増えて106人が白血病で死亡します。被ばくで白血病になったのは、増えた6人だけでしょうか?

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 1万人が20mSvずつ被ばくすれば、ほぼ全員の白血病リスクが平均6%高くなり、その結果、106人が白血病になったわけですから、106人全員が被ばくの犠牲者です。被ばく影響は6人だけではなく、106人全員です。

次回学習会は5月13日「内部被ばくはこうして隠された」

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文責:温品惇一

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